漆をもっと日常に 漆器の選び方と使い方

漆の選び方

日常で漆製品って使っていますか?

お味噌汁を飲むときのお椀くらいでしょうか。

あとはお正月に使うお重など。
それも最近はおせち料理を予約して購入する方が増えてきたので、わざわざお重に移しかえることはしないですよね。

高級なイメージがありますが、実は漆ってもっともっと日常に取り入れるべき器なんです。
冬のイメージがありますが、漆は抗菌効果あるので、実は暑い季節にもおススメ
「人の肌に近い塗料」と言われる漆の話です。

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漆器は日常に使ってこそ

漆器って扱いが難しくて、毎日は使えないということを耳にしたことがありますが、お椀やお箸など昔から日本人の生活には欠かせないものです。

いつの間にか漆に似せた樹脂性も出回り、ますます漆は高級なものという定義がされてきてしまいました。
でも、実際のところ漆は普段使いにするからこそ、その魅力が増してくるんです。

漆ってそもそも何?

生漆

今さらではありますが、そもそも漆って何なんでしょうか。

漆はウルシ科の木の樹液。

漆は接着剤として縄文時代から使われていました。
歴史からいうと12,000年以上とも伝わっています。
塗料としても9,000年くらいの歴史があるそうです。

漆をjapanと呼ばれていたこともあるほど日本にとっては馴染みの深いものなのです。
(現在はほとんど通じないそうですが。)

「漆」という漢字をみても木なのにキヘンでなくサンズイですよね。
これは樹木の中で漆だけ。

塗料として使われていたこの樹液はやがて塗料として使われるように。
この樹液はちょっと不思議な特性があり、水分が乾いて固まるのでなく、湿度を加えることによって固まります。

そして一旦固まると塩酸や硫酸でも溶けません。
陶磁器が割れたときの修復法のひとつ、「金継ぎ」も漆を使用しますよね。

漆職人さんの中には「漆は100年かけてゆっくり固まる」とおっしゃる方もいるほど。
かといって市販の漆器の表面が軟らかいということはないので安心してください。

漆器の特徴

漆器には他の器にはない特徴があります。
耐久性・耐水性・防腐性・耐熱性が高く、これらすべての機能をもつ化学塗料は今もないそうです。

保温性と断熱性

木の生地に漆を塗った漆器は熱が伝わりにくいので、熱いものは熱いまま。
冷たいものは冷たいままいただけます。

たとえ熱い味噌汁が入っていても器が熱くて持てないなんてことはありません。

手にしっとり馴染む質感

漆は不思議な触感があります。
お箸やスプーンからお椀を始めお皿など使い始めるとしっとりと手に馴染んできます。
当然口当たりもよいので漆のスプーンは人気があります。

赤ちゃんのお食い初めや、金属の味が苦手な方におススメ。
プラスチックより断然食事が美味しく、口当たりが滑らかです。

抗菌効果

漆には菌が繁殖しにくいという性質があります。
お正月は年末に作ったおせちを漆のお重に詰めての三カ日はそのおせちを食べることが習わしでした。
漆の器に入れた食材は傷みにくいので理にかなっていますね。
また、漆の花入れに活けた花は割と長もちするとも言われています。

長く使うとツヤが出る

「乾くまで100年かかる」とまではいかなくても、漆職人誰もが口をそろえていうのは「作り手は80%までしか完成させられない。後の20%は使い手によって完成させる。」ということです。
漆は使えば使うほど独特の艶がでてきます。

漆を塗ってから20年後が一番美しいと言われているくらいです。

それは使い手によって微妙に異なり、まさに最後の仕上げを使い手が担うということになります。
漆器は使い手が育てるものなのです。

防水効果

自然素材ですが、陶磁器のように器が水を吸収しません。
洗った後の水切れもいいので、割とすぐにしまえます。
食器洗い機には不向きですが、汚れは落ちやすくすぐ乾くので、手間はさほどかかりません。

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漆製品の選び方

漆選び

出典:FOODIE

実は漆もどきも出回っている昨今。

塗装そのものが合成樹脂だったりします。
「カシュー塗装」「ウレタン塗装」などと表示されたものです。
化学物質でできたものです。

また、塗装は本物の漆でも、土台が木屑を樹脂などで固めたものもあります。
漆の産地のお土産屋さんなどで安く売られているものは、その可能性大。

本物を見極めるのは本当に難しいと言われています。

漆は先に述べた通り、使っているうちにさらにツヤやしっくりとした質感がでてきます。
なので、販売されている時点ではとてもその見極めが難しいのです。

長く付き合うためにもぜひ本物を手にしてください。
いくつかの漆器を選ぶポイントをご紹介しておきます。

漆器店を選ぶ

できれば漆器専門店で購入すると安心です。
しっかりした店舗で買えば、製造元も分かります。

本物の漆器は欠けたりしたときに修復の相談にのってくれます。

また、漆の産地やそれぞれの漆器の特徴など、色々教えてもらえるはずです。

おススメは百貨店などでたまに開催している伝統工芸展。
職人さんと直接お話しができるので色々聞けます。

知らないことはどんどん聞いて、実際手に取り、自分に一番合うと思ったものを選んでくださいね。

品質の良いものを選ぶ

品質の良いものとは、漆製品として美しい仕上がりになっているか、土台は木のくり抜きの製造になっているか、などです。
生地がどういったものを使用しているかは実は分かりにくいのです。
本来、漆器の汁椀などは木の固まりから形を削り出し、ろくろで成形していきます。

この工程は「生地師」という専門の職人さんがいて、漆を塗る「塗師」とは完全分業制になっているのが一般的です。

その生地師さんが作った生地はもちろん、製品の素材表記に「木」とありますが、木屑を樹脂でかためているものも「木」と表記されていたりします。

判断基準は「値段」「重さ」「見込み部の厚さ」

生地の重さと厚さ

樹脂で固めたほうは比較的値段も安いです。また、手に持った時に軽いものが多いですね。

また、生地をろくろで削り出すと、どうしても見込み(器の側面から底部にかけた部分)が口部に比べると厚くなります。
ですが樹脂で固める方法は型にはめ込むのでほぼすべて均等の厚さになると聞いたこともあります。

一概に言えないこともあるので、分からない場合は販売店で聞いてみてください。
しっかりした販売店ならそのあたりも詳しく教えてくれるはずです。

値段

値段は小ぶりのお椀で3,000円くらいが目安。

高いと思うかもしてませんが、漆の工程は下地の目止めから始まり、乾かしては何度も塗り、最低5回は塗る作業があります。
最初の目止めから最終工程まで数週間とも言われているので、つまりひとつのお椀ができるまでかなりの時間がかかるんです。

あまり安いものはそれなりのものと認識しておいたほうがいいと思います。

塗りは高台(器の底の指をかける部分)もしっかりと漆が塗れているかどうか。
全体的に均等にムラなく塗られているかなどがチェックポイントです。

用途で選ぶ

漆器を使ってみたいと思ったらまずおススメなのは「汁椀」。
いわゆる「おわん」です。

お味噌汁のほか、洋風スープやお粥、温麺など、温かいものも冷たいものにも使えて重宝します。
熱の伝導率が低いので、冷たいものを入れても器の表面やテーブル面が結露の水でびっしょりなんてこともありません。

選ぶなら装飾のない、シンプルなものがおススメです。
普段、どのくらいのお椀が一番使い勝手がいいのか目安としてイメージしておくといいかもしれません。

お椀は朱か黒が主流です。
一般的に黒はお吸い物、朱は味噌汁となっているようですがきまりではないので、そこはお好みでいいかと思います。

それても迷って決められない場合は拭き漆といって生地の木目をキレイに活かす塗りのお椀があります。
それもおススメです。

私は普段の味噌汁は拭き漆の小ぶりのお椀を、豚汁やけんちん汁など具だくさんのお味噌汁の場合は塗りの大ぶりのお椀を使っています。

軽くて落としても割れないので小さいお子さん用のご飯茶碗として漆椀を使うのもいいと思います。

拭き漆の汁椀

家で日本酒を飲むと言う方はおちょこなどもおススメ。
やわらかい漆器の口当たりが日本酒の味をさらに美味しく感じさせてくれますよ。

よくある漆の手入れに関するギモン

漆器に関してよく耳にする疑問点をまとめてみました。

手入れが大変そう

洗うときは食器洗い機を使用しないでください。
やわらかいスポンジで中性洗剤で洗い、固いものと重ならないようなところで乾燥させてください。

もしご飯粒などこびりつきがある場合は10分くらい水につけてください。

漆は拭くと艶がでるので、洗った後に一度乾いたふきんで拭いておくといいかもしれません。

食器棚に仕舞うときは、陶器など固いものと重ねると傷がつくので漆は漆同士重ねるようにしたほうが安心です。

漆ってかぶれる?

漆は乾いてしまうとかぶれることはありません。

漆がかぶれる原因は漆の主成分ウルシオール
漆の樹液や塗る段階の生漆(きうるし)に触れることにより人間の皮膚からウルシオールが侵入し、アレルギー反応がおこります。かぶれやすい体質の人は、漆の樹の下を歩いただけでもかぶれると言います。
それほど強い成分なのですが、乾くとまったくその働きはなくなります。

そのため、製品となった漆器でかぶれることはまずありません。

ただ、ごく稀に塗ってまもない製品によってかぶれる人がいるそうです。
その場合はすぐ専門医に相談してください。

匂いが気になる

使っていない漆器には漆特有の匂いがあります。
好きな方もいれば、食事の匂いに混じるので嫌だと言う方もいますね。

使っていると自然に消えるのですが、もし少しでも早く匂いを取りたいという場合は、うすめた酢を柔らかい布につけて拭くか、少しお酢をいれたお湯に1時間ほど浸けてください。

そのほか、
・鷹の爪を半分器の内側に入れておく。
・直射日光の当たらない風通しのよいところに置いておく。
などの方法があります。

使えない食材がある?

特にないそうですが、沸騰したての熱湯は避けたほうがいいようです。
酸に弱いという俗説がありますが、全く問題ありません。

使用上の注意?

漆は紫外線と乾燥に弱いので、これは注意してください。
オーブン・電子レンジ・食器洗い機は使用できません。
冷蔵庫も乾燥がすすむので避けた方がよさそうです。

知っておきたい漆の産地

日本はこれだけ漆の産地があります。

旅行に行ったときはぜひ実際見てみてください。
とっておきの出会いがあるかもしれませんよ。

主な漆器産地(国の伝統工芸指定工芸)
津軽塗(青森県)・川連漆器(秋田県)・秀衡塗(岩手県)浄法寺塗(岩手県)・鳴子漆器(宮城県)・村上木彫堆朱(新潟県)・新潟漆器(新潟県)・会津塗(福島県)・鎌倉彫(神奈川県)・小田原漆器(神奈川県)・木曽漆器(長野県)・飛騨春慶(岐阜県)輪島塗(石川県)山中漆器(石川県)・金沢漆器(石川県)・高岡漆器(富山県)・越前漆器(福井県)・若狭塗(福井県)・京漆器(京都府)・京漆器(和歌山県)・大内塗(山口県)・香川漆器(香川県)・琉球漆器(沖縄県)

東京にも都指定の伝統工芸で「江戸漆器」などもあります。

こうして見ると日本のほとんど各地で漆工芸は行われているんですね。
漆は使えば使うほど、知れば知るほど楽しめる工芸です。

ぜひ長~くつきあって、自分の漆器を育ててください。

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