歌舞伎「天守物語」見どころとあらすじ

2023年、天守閣という演目が注目されました。

一度目は姫路城で行われた平成中村座の天守物語。そして二度目は歌舞伎座十二月公演。
姫路城は天守閣物語の舞台となった場所。
そして歌舞伎座では坂東玉三郎さんが当たり役と言われていた富姫を中村七之助さんが演じ、自ら共演。

どちらも大きな話題となりました。
その天守物語とはどんなお話なのでしょうか。

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天守物語とは

天守物語は明治から昭和初期にかけて活躍し「高野聖」などで知られる小説家、泉鏡花の作。

小説として書かれたものでなく最初から戯曲として書かれたものです。

これをぜひ舞台化したいという話が持ち上がり、鏡花自身大変喜び、お金は要らない、むしろ払ってでも実現させてほしいと懇願したと言います。

しかしながら鏡花の生前に舞台化されることはありませんでした。
初演は歌舞伎でなく、当時の舞台俳優で上演されました。

坂東玉三郎さんとこの演目の関係は深く、意外にも最初は映画の演出でした。
その後、歌舞伎やオペラの演目として度々上演されています。

歌舞伎では玉三郎さんが出演する一方演出にも携わっています。

主な登場人物

主な登場人物のご紹介です。

富姫(とみひめ)
姫路城天守閣の最上階に棲む天守夫人。
美しい若い女性の姿をしているが、実際は100年この場所に棲む妖の姫。。

亀姫(かめひめ)
岩代国麻耶郡(いわしろのくにまやごおり)猪苗代の亀ヶ城に棲む姫。
富姫を姉と慕っています。

舌長姥(したながうば)
三尺の舌をもつ亀姫おつきの老婆。
この舌で舐められると、人でさえ骨になってしまいます。

姫川図書之助(ひめかわずしょのすけ)
姫路城主武田播磨守(たけだはりまのかみ)に仕える鷹匠。
主君の白鷹を逃がしたため切腹させられるところでしたが、人を寄せ付けないと言われる天守閣最上階まで登って鷹を探索するよう命じられます。

近江之丞桃六(おうみのじょうとうろく)
獅子頭を彫った職人。傷つけられた獅子頭の目を直します。

天守物語あらすじ

天守物語あらすじ
姫路城天守閣五重。
天守閣の最上階は異形の者たちが棲むと言われ、人間は近づけないとされています。
事実、そこには美しい妖の姫が棲んでいます。名は富姫。

天守からいつも下の城に住む者たちを高見見物。

その日、猪苗代の亀ヶ城に棲む亀姫が姉と慕う富姫に会いに雲に乗ってやってきます。
亀姫が土産は、なんと播磨守の兄弟亀ヶ城の主・武田衛門之介の生首。

富姫はこんな立派なものをもらっては、お土産に用意してた兜では申し訳ないと一旦下げます。

ひと時を楽しむ二人。下界では鷹狩が行われていました。
その白鷹を気に入った亀姫。

富姫は白鷹を魔力で捕らえ、亀姫へ手土産と差し出します。
白鷹をもらい、亀姫が帰ってしまうと富姫はさみしさを覚えます。

一人うす暗い天守に佇んでいると、姫路城主武田播磨守に仕える鷹匠、姫川図書之助が上がってきます。

人間がここに足を踏み入れることなどここ100年ない。
富姫は驚きます。

ここに来た理由を問うと、主の鷹を逃し切腹を命じられたが、誰も足を踏み入れられないここ天守の最上階に行ってくれば命を助けると言われ、参じたとのこと。

富姫は二度と来るなと図書之助を追い払います。
階段を下りる途中、手燭の灯りを消してしまい、図書之助はまた富姫のもとに戻ります。

灯が欲しいと乞うと、富姫は今度は追い払うことなく、灯を与え最上階にきた証として亀姫に渡すはずだった兜を図書之助にあげます。

しかしながらこの兜を盗んだ疑いをかけられ、城中の家臣に追われることに。
三度富姫のもとに逃げ込みます。

このとき、富姫はすっかり図書之助のことが忘れられなくなっていたため、図書之助を匿います。

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追手が天守最上階に上がってきました。
播磨守の家来小田原修理は獅子頭をみつけ、この獅子頭にまつわる伝説を家臣にきかせます。

家臣たちは獅子頭を取り囲み、破壊しようとしますが、獅子頭が突然暴れます。
家臣たちはとっさに槍で目をつきました。すると富姫と図書之助の目も見えなくなってしまいます。

富姫は亀姫からもらった生首を家臣たちに渡すと家臣たちは自身の主の首と勘違いし、続々と城下へ逃げていきます。

光を失った富姫と図書之助。
お互い相手への想いを口にします。
富姫にとっては百年にたった一度の恋だったのです。

そこへ獅子頭を彫った職人、桃六が現れ、獅子頭の目を彫りなおします。

すると富姫と図書之助の目が戻ります。

二人はお互いの顔を見つめあい、愛を確かめあうのでした。

玉三郎さんの富姫

亀姫を演じる役者は今のことろ玉三郎さんに並ぶ方はいらっしゃりませんが、2023年12月大歌舞伎で中村七之助さんが演じ、亀姫を玉三郎さんが演じました。

これがなかなかの相乗効果で見ごたえたっぷり。
七之助さんの妹分となった玉三郎さんのお茶目っぷり。

素敵でした。
当然これから個性ある富姫が出てくることでしょう。

玉三郎さんが今後富姫を演じることがあるかどうかは分りませんが、どうしても一度観たいという方は定期的にシネマ歌舞伎などで上演しています。

泉鏡花原作・玉三郎主演。
時代を超えた強豪タッグです。

2023年、この演目の舞台の姫路城が世界遺産登録に認定され30周年となり、平成中村座では本場姫路城での公演が実現。さらにその七之助と玉三郎が歌舞伎座で共演という、まさに天守閣のための1年となりました。

今後上演の際はぜひ足を運んでみてくださいね。
この記事が参考になればうれしいです。

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