シネマ歌舞伎「幽玄」美と躍動の圧巻の舞台

シネマ歌舞伎

2019年9月のシネマ歌舞伎「月イチ歌舞伎」は「幽玄」。

坂東玉三郎が太鼓芸能集団 鼓童とタッグを組んで作り上げた、
まさに現実でないような妖艶で迫力ある舞台。

感動冷めやらぬまま、観たものそのままにお伝えします。

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坂東玉三郎と太鼓芸能集団 鼓童コラボ「幽玄」

「太鼓芸能集団 鼓童」とは佐渡南西部で活動している太鼓中心とした芸能集団です。
まずその表現の豊かさに驚きました。

太鼓をつかったパフォーマンスというと、迫力満点の躍動感あふれる音の響きを楽しむイメージでしたが、
この幽玄では太鼓は時にやさしく、時に迫力満点に、一糸乱れぬばちさばき見事に繰り広げられます。

太鼓ってこんなに表現の幅があったんだ。

というのが率直な感想。

確かに歌舞伎の効果音にも太鼓は使われますから、叩き方で様々な音が出るのは納得いきますね。

この太鼓芸能集団が次のステップに進むため要請したのが玉三郎。

2000年より歌舞伎界の女形最高峰の役者との美と躍動感あふれる舞台が始まりました。
2003年玉三郎演出「鼓童ワン・アース・ツアー スペシャル」、2006 年に「アマテラス」で初共演、そして
2017年この能の世界をテーマにした幽玄が上演。大好評を得ました。

使われる楽器は太鼓だけではありません。
横笛や琴、どらやジャンガラも使います。

鼓童ってどんな集団?

「鼓童」とは、人間にとって基本的なリズムである心臓の鼓動から音(おん)をとった名前で、大太鼓の響きが母親の胎内で聞いた最初の音をイメージしていると言います。
今や世界公演も多く、数々の賞を受賞。

佐渡を拠点に年間世界中を舞台に公演をおこなっています。
「交流学校公演」、文化を交錯させる場でもある「アース・セレブレーション」、などそのかたちは様々。

「伝統的な芸能の中に蓄積されている普遍的な精神やエネルギーを、自らの肉体を通し、新たなかたちに変えて舞台に表出させる」を目的に
その表現は聴く人・観る人を魅了し続けています。

玉三郎に演出を要請したのはさらにその表現の幅を広げたいということからだそうです。

今後の活躍がますます楽しみな音楽ユニットですね。

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能の演目構成の舞台

幽玄とは

能の演目「羽衣」「道成寺」「石橋」の三部構成。
驚くのは各演目への切り替わり。

普通歌舞伎では演目と演目の間では一旦幕を下ろしますが、この幽玄はこの3演目合わせて「幽玄」。
演目が変われば演者も衣装やメイクを変えなければですが、これを「鼓童」の演奏がつなぎます。

それは「鼓童」のコンサートのごとく、様々なパフォーマンスが繰り広げられ、それはけっしてつなぎでなく一演目として観客を魅了します。

「羽衣」

海岸で漁師がキレイな羽衣を見つけます。それを家宝にしようと持って帰ろうとしたところ、美しい天女が現れます。
その羽衣がないと天に帰れないと言う天女。舞を見せてくれたら返してやろうと漁師は言います。

薄暗い舞台に14台の和太鼓。
袴と裃姿の鼓童メンバーが音もなく舞台に現れることから幕は始まります。

バチの振り方、14人の息ぴったりの太鼓演奏が始まります。

この羽衣、能の動きがとても和太鼓に合い、流れるような玉三郎の舞が楽しめます。

「道成寺」

歌舞伎でもお馴染みの演目「京鹿の子娘道成寺」。
もちろん歌舞伎の演出とは全く異なります。

昔僧侶に恋した娘がその裏切りを知り、寺の釣鐘に閉じ込め焼き殺したという。
それからしばらくし、今日は新しい釣鐘の開幕式。
そこへ一人の娘がお参りしたいと訪れます。女人禁制のこの寺。舞を献上するならと立ち入りを許されますが、待っているうちに娘の表情がどんどんあやしくなり、ついに巨大な蛇に姿を変えます。

今回歌舞伎の演出ですごかったのはその蛇。
玉三郎の舞が終わり、釣鐘に消えると代わりに出てきたのは巨大蛇。

その蛇が鼓童の演奏にあわせ、暴れまわります。
この動きがなんともスゴイ!圧巻です。

「石橋」

なんと、連獅子の5人版。息の合った豪快な毛振りが見物のこの演目。
今回鼓童のメンバーから2名が挑戦。

玉三郎の獅子も珍しいですよね。

5人で合わせる豪快な毛振りを堪能できます。

今回の見どころ

道成寺では別珍のタンクトップにスパッツという統一の衣装を着た鼓童のパフォーマンスと玉三郎のからみが見どころ。
筋肉がっちりとしたパフォーマーの横で玉三郎がその太鼓に合わせ、時に激しく踊ります。

普段の歌舞伎の演目ではなかなかみられない躍動感あふれる玉三郎の踊りが素晴らしく、魅了されます。

また石橋ではなんといっても玉三郎の獅子が力強くもあり、動きがどこか妖艶でもあり。
他ではなかなか見られない一幕です。

やはりダイナミックさというより、どこかしなやかさはありますね。

必見ですよ。

歌舞伎を映像で観る

個人的に舞台映像を映像で観るのは抵抗あります。
ライブでしか味わえないものは多いはず。

現にこれを映像化するにあたり、やはり音は足さないと臨場感がでなかったそうです。

そういうものなんですよね。

ただ、もう二度と生では見られないものであれば、それは観ないより観た方が得。

終わった時、思わず拍手しそうになったほど圧巻の映像でした。

歌舞伎をわざわざ映像で観るまでもないと思っている方も絶対楽しめること間違いなしです。

上演期間が短いのでお早めに。

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