歌舞伎 「義経千本桜」見どころとあらすじ

「義経千本桜」見どころとあらすじ

歌川豊国 「よしつね 三枡源之助」 「しづか 尾上菊五郎」 「忠のぶ 関三十郎」
出典:ART RESEARCH CENTER VIRTUAL MUSEUM

「仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)」、「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」と並び歌舞伎三大名作とされる「義経千本桜(よしつねせんぼんさくら)」。これらは義太夫狂言三大作でもあります。
中でも義経千本桜は年間何回も上演される演目。

ただ、通し狂言としてすべての段を一度に上演されることは少なく、抜きだしで上演されることがほとんどです。

主人公が場ごとに変わるので、抜きだしの上演でも十分楽しめるのですが、全体のストーリーを把握しておくともっと楽しめるかと思います。
義経千本桜のあらすじと見どころのご紹介です。

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義経千本桜(よしつねせんぼんさくら)とは

竹田出雲・三好松洛・並木千柳の合作。
義太夫狂言の三大名作のひとつとされています。

歌舞伎には義経の物語が多いのですが、これもそのうちのひとつ。

史実を土台に壮大なファンタジー仕立てになっていて、年間の上演数が最も多い演目のひとつです。

義経千本桜あらすじ

全五段のうち、二段目の「渡海屋」や「大物浦」の場、三段目の「すし屋」の場、四段目の「川連法眼館」を抜きだして上演されることが多いですね。

まずは登場人物のご紹介です。

登場人物

登場人物は多いので代表的な人物だけ上げておきます。

源義経(みなもとのよしつね)
源氏の大将。平家に勝利したものの、兄頼朝から追われる身となる。

静御前(しずかごぜん)
義経の愛妾。都落ちする義経の同行を懇願するが聞き入れられず、初音の鼓を持って忠信を供にし、吉野山へ向かう。

卿の君(きょうのきみ)
義経の正室。実父は頼朝の家臣の川越太郎。
平時忠の娘として義経の正室になったため、義経と実父の立場を察し自害する。

武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)
義経の家来。無鉄砲なところもあり義経の怒りをかいます。

★佐藤忠信 実は 源九郎狐(げんくろうぎつね)
伏見稲荷で義経たちと別れた静御前の危機を救い、「源九郎義経」の名を賜った。
義経の家来、佐藤忠信に化け、静御前に同行して吉野山に向かうが目当ては初音の鼓。

★渡海屋銀平 実は 平知盛(とかいやぎんぺい じつは たいらのとももり)
大物浦で廻船問屋を営み、義経をかくまうが、実は平清盛の四男知盛。
一旦は死んだと思わせておいて素性を隠し義経への復讐の機をねらう。

娘お安 実は 安徳帝(むすめおやす じつは あんとくてい)
渡海屋銀平の娘。実は安徳帝。
平家一門とともに屋島の戦で崩御したと思われていたが、銀平とお柳の娘として渡海屋に匿われていた。

★いがみの権太(いがみのごんた)
下市村の鮓屋の主人弥左衛門の息子。
弥助が実は維盛だと確認した後、妻子を身替わりに立てて真人間に立ち返ろうとする。
ちなみに「いがみ」とは悪人のこと。

小せん(こせん)
権太の女房。もとは御所(ごせ)の遊女。

鮓屋弥左衛門(すしややざえもん)
下市村のすし屋「釣瓶鮓(つるべずし)」の主人。権太とお里の父。
昔平重盛に大恩を受けたことから、偶然見つけ出した維盛を自分の店の下男として匿う。

弥助 実は 平維盛(やすけ じつは たいらのこれもり)
釣瓶鮓に雇われているが、実は平家嫡流重盛の長男維盛。梶原に見つかりそうなところを権太に救われ、この世の無常を悟り、出家を決断して高野山へ旅立つ。

横川覚範 実は 平教経(よかわのかくはん じつは たいらののりつね)
義経が吉野山に潜んでいることを察知し、追いつめようとする僧徒。正体は平清盛の甥。と呼ばれる。屋島の戦いで忠信の兄佐藤継信(つぎのぶ)を討ち取ったことから、忠信とも深い因縁がある。

お話が源平合戦の後、平家武将・安徳天皇がまだ生きていたという想定の話から登場人物も「○○に扮した」という設定が多いです。
実は全体の話の中で主人公が変わるのですが★をつけた3人が段ごとに主人公となります。

義経千本桜はタイトルにもなっている源義経の話というより、義経をめぐる3人の男の生きさまを描いた話といってもいいかもしれません。

序章:大序・院の御所の段

源平合戦にて平家を滅ぼした源義経。後白河法皇より初音の鼓を賜ります。
左大臣藤原朝方はこの鼓はすなわち兄頼朝を討てと言うお達しなのだと偽の文書を義経に預けますが、義経は聴く耳をもちません。

北嵯峨庵室の段

平重盛の息子の平維盛の正室、若葉の内侍とわが子六代と共に隠れ住む草庵に維盛の家臣小金吾武里が訪れます。
小金吾武里より実は維盛は生き延び、高野山にいると告げられ、若葉の内侍は夫に会うため三人で高野山へ行くことを決意。

堀川御所の段

京の義経の住まいでは宴が行われていました。
そこへ鎌倉から、使者として川越太郎重頼が訪れます。
話によると、討ちとったと思っていた平知盛・平維盛・平教経の首が偽首だったこと、さらに後白河法皇より賜った初音の鼓のことで鎌倉に対する謀叛の疑いがかけられていること、平家の平大納言時忠の娘である卿の君を妻にしたことも謀反の証とされていることを義経は知らされます。

義経は鼓は法皇より賜ったものなので返上できないが、自らそれを打つことはしないこと、さらには卿の君は実は川越太郎重頼の娘であり、それを時忠が養女に貰い受けたに過ぎないと制します。

それを聞いていた卿の君は実の父と夫が窮地に立たされていることに心を痛め、自ら命を絶ってしまいます。

川越太郎重頼は悲しみをこらえ、卿の君の首を落とします。

そのとき、海野太郎と土佐坊正尊が鎌倉より攻めてきました。
義経はなんとか争わずに事を済まそうとしていたところ弁慶が門外で海野太郎を討ってしまいます。

卿の君の死は無駄になってしまいました。

義経は弁慶が戻るのを待たず、初音の鼓を持ち脱出します。

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二段目:伏見稲荷の段

義経は駿河次郎と亀井六郎を供にして伏見稲荷まで逃げてきました。
そこへ義経の愛妾、静御前が一行に追いつきます。
そこへ弁慶も合流。しかし義経は弁慶を許しません。弁慶は主君を狙うものを見逃せなかったと涙ながらに訴えました。

周りの説得もあり、義経は今回限りと弁慶を許し、同行も許可しました。

ただ、静にいたっては女性を一緒に連れて行くのは危険だからと同行を迫る静に都にとどまるよう言います。
義経は次に会うまで自分の形見にしてほしいと初音の鼓を静に渡します。

それでも義経に泣きつく静を木にしばり、一行は立ち去りました。
そこへ鎌倉方の追手が静をとらえようとすると、義経の家来佐藤忠信が現れて助けます。

追手が来ていると戻ってきた義経は佐藤忠信に「源九郎義経」の姓名を与え、静の供を言いつけまた西へと向かいました。
しかしながらこの忠信、なんとなく動作がおかしい。

渡海屋の段

九州へ船で向かう義経一行。
悪天候のため、摂津大物浦の舟宿の渡海屋に立ち寄ります。

実はここの主人、渡海屋銀平は平清盛の四男の平知盛。
そして娘のお安は実は入水したはずの安徳天皇で、女房のおりうは実は安徳帝の乳母典侍の局(すけのつぼね)。

義経の首を虎視眈々と狙うものの、怪しまれないようひと芝居うちます。
知盛は安徳帝を掲げ平家の再興を狙っているのです。

追手がくるので早く出た方がいいと義経たちを出発させ、嵐を狙って得意な船いくさで義経を討とうとしました。

白装束に着替え幽霊を装い、同じく幽霊に扮した手勢を率いて海上戦をしかけます。

大物浦の段

しかしながら蓋をあけてみると義経の方が一枚上手。
圧倒的な勢いで知盛勢を落としていきます。
やがて知盛以外はすべて討たれ、その知らせを宿で聞いた安徳天皇と典侍の局はこれまでと自害を決めます。

典侍の局は幼い安徳天皇を連れて海へ飛び込もうとしたところ、義経が制止します。
義経は安徳天皇を抱きかかえ、宿へと戻ります。

そのとき、全身に矢をうけ血だらけになった知盛も戻ってきました。
義経は知盛に計画を見抜いていたこと、さらに安徳天皇は悪いようにしないと告げます。

それでも最後の力を振り絞り義経に襲いかかろうとする知盛の首に弁慶が数珠をかけ制します。
さらに安徳天皇も知盛に義経を仇に思わないように言い伝えました。

そのさなかに典侍の局は自害してしまい、とうとう知盛はこれまでと悟りました。

安徳天皇を義経に託し、知盛は船に乗って大物浦の海に出ると碇を担ぎ、そのまま背中から海へ身を投げます。

 

歌舞伎の立ち回りで、蹴られたりして足をV字に開きながら尻もちをつくことを「ギバ」と言いますが、義経千本桜の知盛の背中から海の中へと落ちていくシーンもこのギバ。
背中から客先とは反対側に倒れるので、最後に客が見るのは知盛の足。
この足がキレイなV字で倒れこむかどうかは役者の技の見せ所。

三段目:椎の木の段

若葉の内侍、六代、小金吾の一行は平維盛を探し高野山へ。

茶屋で休んでいるとき、小金吾と内侍が六代を残し席をはずします。
六代の薬が切れたことを聞いた茶屋の女が代わりに買いに走って行きました。

そんな時に落ちた木の実で遊ぶ六代。

そこへ旅先の男が、木から新しい実を落としてあげましょうと木に石をなげ、実を落とします。
喜ぶ六代。その姿を見て男は荷を持って立ち去ります。

そこへ戻った小金吾。茶屋の腰かけに置いておいた自分の荷物がなく、代わりに見知らぬ荷があるのに気付きます。

誰かが間違えて荷を持って行ってしまったと気づいた時、先ほどこの場を立ち去った男が荷を間違えたと戻ってきます。

ここでめでたしとはならず、自分の荷には20両入っていたのに今返された荷物にはその金がない、取ったのではと小金吾に言いがかりをつけます。

小金吾はお尋ね者である内侍と六代の身の上を思い、なんとか事を荒立てなくなかったのですが、男は一方に譲りません。
小金吾はついに刀を抜いてしまいます。

内侍に制止され、小金吾は自らの金銭を男に渡し、内侍、六代と共にその場を立ち去ります。

そこへ茶屋の女が戻り、男の胸倉を捕まえます。
実はこの男、同じ手口で荒稼ぎする悪党の権太。そしてこの茶屋の女はその女房小せん。

こんなことはやめてほしいと迫る小せんに開き直る権太。
二人の間にできた子どもと一緒に家路につきます。

小金吾討死の段

若葉の内侍と六代の追手はすぐ近くまで来ていました。
藤原朝方の家来猪熊大之進らが内侍を襲いますが、小金吾が切り込み内侍は助かります。
しかしながら小金吾は深い傷を負うこととなりました。

小金吾は内侍と六代を先に逃げるよう促し、そのまま息を引き取ります。
そこへ通りかかったのは釣瓶鮓屋の弥左衛門。

何を思ったか、小金吾の死体を見ると自分の小刀で小金吾の首を落とし持ち帰ります。

 

小金吾討死の立ち廻りは昭和の名人坂東八重之助が編み出したという名場面。
見ものです。

すし屋の段

弥左衛門の娘のお里は明日の晩には下男の弥助と祝言をあげることとなっていました。
弥助が戻り、お里が早速女房気取り。そんな時にこの家の惣領いがみの権太がやってきます。権太はお里の兄にあたります。

権太は母親と話をするため、弥助とお里をその場から追い出します。

権太は母親に、年貢の金を盗まれたのでお縄になると言いだします。もちろんこれは嘘。
しかしながら母親は本気にしてしまい、権太にお金を渡してしまいます。

権太は空の鮓桶にその金を入れて持ちだそうとしたときに父、弥左衛門が戻ってきました。
権太は慌てて、とりあえずそこに並んだ鮓桶の中に金を入れた桶を紛れ込ませ、戸口に身を隠します。

弥左衛門が帰ってきたので奥から出てきた弥助。
弥左衛門は持ち帰った小金吾の首を鮓桶に隠し、弥助を座らせて話を始めます。

実はこの弥助は平重盛の子息の維盛。

源平の合戦の後、偶然会った維盛を弥左衛門はずっとかくまっていました。
弥左衛門は昔平重盛に恩があったため、維盛を守る決心をしたのでした。

弥助は本当は妻子(若葉の内侍と六代)がある身ながら明日お里と祝言いいものかどうか悩みます。
そんなおり、表から一晩泊めてほしいと女性の声がします。

ここは鮓屋で宿ではないと弥助は断りますが、幼子もいるとのことで取りあえず戸を開けると自分の妻子若葉の内侍と六代が立っていました。
思わぬ再会に三人は喜びます。

家の中で積る話をしていたところ、それを聞いていたお里は泣きだしますが自分は身を引くことを決めます。
そこへ鎌倉の武士梶原景時が維盛がここに隠れている情報を聞きつけ、その身を狙って来ます。
弥左衛門に維盛の首を討って渡せと言い渡します。

弥左衛門は鮓桶に入れた小金吾の首を維盛の首といって景時に渡そうとしますが、弥左衛門の女房はその中には権太にあげた金が入っていると思い、それを制止します。
押し問答している夫婦を景時がとらえようとしたとき、権太が突然現れ、鮓桶を「維盛の首」と言って景時に渡します。さらに女性と子どもも引き渡し、維盛の女房と子どもも引き渡すと言います。

影時は権太に褒美を渡し、去ります。

弥左衛門はその様子を見て激怒します。
普段から悪事を働く息子の権太を許せなかった弥左衛門はついに息子を指してしまいます。

もがく権太は最後、景時に渡したのは弥左衛門が持ち帰った首で、引き渡した女性と子どもは自分の女房と子どもと告げます。

鮓桶の中身が生首(小金吾)と取り違えたことに気付き、これを維盛の身替りとして景時に差し出したのです。
権太は先の維盛と弥左衛門のやりとりを聞いているうち、改心したと言います。

鮓桶を持ちだした時、女房子どもと会い、内侍六代の身替りとなると言ってくれたので従ったと言います。

皮肉な結末となりました。

維盛は出家を決めます。

四段目:道行初音旅(みちゆきはつねのたび)

場面は変わって都でとどまっている静御前。
義経が恋しくなり、とうとう吉野山へひとり向かう決心をします。

道中、休憩しているときに初音の鼓を打つとどこからか佐藤忠信が現れました。

蔵王堂の段

吉野山蔵王堂では、河連法眼が山科の法橋坊たちを集め、兄頼朝に背いた九郎義経がこの吉野山に来ていて、そのものを匿えば山ごとやきはらうという書状が届いたと話をしています。
義経に味方すべきかどうか。
法橋坊たちみな義経に味方すると言ったところ、当の河連法眼は義経をとらえると言いだします。

実は河連法眼、この時すでに義経をかくまっていました。
反対に法橋坊たちは殺すべきと思っていたのですが、河連法眼を試すつもりで反対のことを言ったのです。

法眼が自分たちを信用していないと知った法橋坊たちは河連法眼の館を襲撃することを企てます。

河連法眼館の段

義経千本桜 河連法眼館の段

歌川豊国 四段目の切「河連法眼館」の場 出典:Wikipedia

河連法眼館で身を寄せている義経のもとに佐藤忠信がやってきます。病気の母の見舞いに行っていたと言いますが、静御前の姿が見えません。
義経が問いただすと忠信は何のことか分からぬ様子です。

その様子に義経は怒ります。
吉野山に向かう時、静御前のことを任せたはずです。
まさか裏切り静を鎌倉に引き渡したのではと忠信に迫りますが、忠信は混乱している様子です。

そんなさなか、また忠信と静がこの館に来たと言う知らせが入りました。

その忠信こそ偽ものと、先にいた忠信は捕えるべく駆け出しますが義経の家臣に抑えられます。
義経との再会を喜ぶ静に、義経は忠信のことを聞きます。

静の供をしていたはずの忠信はいつの間にかいなくなっていて、今そこに捕まっている忠信は先ほどまで一緒だった忠信とは違い様な気がするという静午前。

忠信はいつも鼓を打つと現れると言うので、静に鼓を打つことを命じ義経は影に隠れます。
静御前が一人鼓を打ちだすとどこからともなく忠信が現れました。

刀をつきつける静御前。
忠信は切られる覚えはないと命乞いします。

鼓を打つと現れるというあやしさを問い詰めると、忠信は自分は狐で、その初音の鼓の皮は自分の母だという。
離れがたくなり、忠信に扮して傍にいたと言います。

本物の忠信にこれ以上迷惑はかけられないと、子狐は泣きながら姿を消します。
それを聞いていた義経は哀れに思い、呼び戻そうとして鼓を打ちますが音がでなくなってしまいました。

義経は自らの生い立ちもまた親兄弟との縁の薄さであったと狐の気持ちに寄りそいます。
静も嘆くとまた子狐が現れました。

この初音の鼓を子狐に与えると、子狐は大喜び。

狐はそのお礼にと、今宵悪法師たちが義経を討ちにこの館を襲うことを知らせ、鼓とともに姿を消しました。

 

本物の忠信と狐の忠信は同一人物が演じます。
その早変わりや狐が飛び出してくる仕掛けがみどころ。
義経千本桜で一番有名なシーンです。

五段目:吉野山の段

吉野山で、佐藤忠信は横川の覚範こと平教経と決着をつけることとなりました。
佐藤忠信にとって教経は兄の仇です。

激しい戦いとなり、忠信が劣勢になったときもう一人の忠信が現れ、加勢しました。
源九郎狐が幻術で教経を負かします。

その後ひと波乱あり、結局源平合戦で生き延びた平家はすべて滅びることとなりました。

義経千本桜の見どころ

源平合戦という史実をもとに人間模様が色濃く描かれている義経千本桜。
場で主人公が変わるほど、様々な人間模様が繰り広げられます。

早変わりやケレンと呼ばれる宙乗り、舞台の仕掛けの面白さも楽しめる演目です。
この演出は江戸時代から続いているもの。宙乗りも昔から行われていたんです。

先のあらすじでも随所にポイントをご紹介しましたが、ここでまとめて義経千本桜の見どころをまとめてみました。

【3人の主人公】
「佐藤忠信 実は 源九郎狐」「渡海屋銀平 実は 平知盛」「いがみの権太」がそれぞれの段の主人公。
じつはこのお話、源義経が主人公というより、義経をとりまく人々が様々な場面でクローズされるという話。

よって通し狂言でなく抜きだしの上演でも十分楽しめるのです。

「この三人がどう一つの物語に関わるの?」と思った方。
もう一度本記事のあらすじから一読ください(笑)

【大物浦の段 知盛の最期】
背中から舞台セット裏方へ落ちる、役者も命がけのこの場面。
ギバと呼ばれる演出。
背丈あるほどの大きな碇をかついで台詞を吐き、背中から落ちる場面は見ものです。

この時、V字に開いた足の裏が最後まで天井に向いたまま落ちるのが理想とされているそうです。
役者さんの腕(足?)の見せ所ですね。

【小金吾討死の段 小金吾討死の立ち廻り】
ポイントでも記述しましたが、小金吾討死の立ち廻りは昭和の名人坂東八重之助が編み出したという名場面です。
追手に囲まれた小金吾。

取り縄を使った演出が切り取られたひとつの絵にも見えるような見事な場面です。

【すし屋の段 権太の改心】
悪人が、後に実は善人であったことを明らかにする演出を「もどり」といいますが、権太の最後はまさにそれ。
前の段でもあったように権太は人からお金を巻き上げることしかしません。

そんなときに親と親がかくまった維盛とのやり取りを聞き、ふと人情が湧きます。
結果親に刺されてしまうのですが、歌舞伎ならではの心打たれる場となっています。

【河連法眼館の段 狐の動き】
鼓を追っかけて人間に化ける狐の仕草。

欄干を渡ったり、鼓の音で瞬時に縁の下の階段から現れたり。

特に澤瀉屋(おもだかや)の役者はさらに趣向を凝らします。
狐が軒下に入った矢先、その上の障子窓から忠信が顔を出すといった早変わりなど。
(もちろん狐と忠信は同じ役者が演じます)

この段は音羽屋(尾上菊五郎や菊之助などの屋号)と澤瀉屋(市川猿之助などの屋号)とで多少演出が異なるそうなので、それを見比べるのも面白いですね。

狐の所作や言い回しなどは特に注目です。

ちなみにいがみの権太は江戸時代の五代目松本幸四郎がはまり役で、その幸四郎に左眉上にほくろがあったことから、今も演じる役者は左眉上にほくろを描くそうです。

これもチェックポイントですね。

歌舞伎三大名作と呼ばれる所以の話の奥深さと演出のダイナミックさがお分かりいただけたかと思います。
長い作品ですが概ね抜きだしで上演されるので一度は観てみてください。

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