歌舞伎 「助六」見どころとあらすじ

助六所縁江戸櫻

出典:Amazon

歌舞伎十八番の内「助六」は数ある歌舞伎演目の中でも特に人気の高い演目のひとつ。

実際観たことはなくても、紫鉢巻に紫の殻傘で見得をきる役者像は誰もが知っているのではないでしょうか。

この助六、歌舞伎では特別の演目でもあるのです。
その背景とあらすじ、さらに観るときにおさえたい席とは。

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助六という演目

助六は歌舞伎演目の中でもちょっと特別なものです。

もともとは市川團十郎家のお家芸
江戸時代の「江戸一の色男」と「吉原のトップの花魁」が繰り広げる江戸文化を粋に壮大に描かれている大人気演目です。

特別な演目というのは、その人気の高さ、由緒だけでなく役者にとっても同じこと。
助六の恋仲にある花魁の「揚巻」

女方で最も大役とされ、近年中村七之助が初めて演じ、話題となりました。

四代目中村福助

演者で演目のタイトルが変わる?!

「歌舞伎十八番」とというのは市川團十郎家(成田屋)縁の演目を指します。
繰り返しになりますが、この助六も同じこと。

ただ、実はこの助六、演じる役者によって演目のタイトルが変わるのです。
これは数ある演目の中で、とても珍しいことです。

歌舞伎の演目名は「本外題(ほんげだい)」と「通称」があります。
通称は本題を略したものや、「場」をそのまま利用することがあります。

そのため、同じ演目でも演じる場によってタイトルが異なる場合も。

このように一つの本外題に対し、複数の通称がある場合はよくあること。
しかしながらこの助六は反対に、本外題が複数あるのです。

これは主役の助六を誰が演じるかで変わります。

宗家の成田屋が演じるときの本外題が元で、他複数存在します。

の固さを選ばない

助六所縁江戸櫻
すけろく ゆかりの えどざくら
市川團十郎または市川海老蔵(成田屋)
助六曲輪江戸櫻
すけろく くるわの えどざくら
松本幸四郎(高麗屋)
助六曲輪菊
すけろく くるわの ももよぐさ
尾上菊五郎(音羽屋)
助六曲輪初花櫻
すけろく くるわの はつざくら
片岡仁左衛門(松嶋屋)
助六櫻二重帯
すけろく さくらの ふたえおび
坂東三津五郎(大和屋)
助六曲輪澤瀉櫻
すけろく くるわの いえざくら
市川猿之助(澤瀉屋)

これだけあります。
ちなみに通称はどれも「助六」です。

変わるのはタイトルだけではありません。

成田屋演じる助六所縁江戸櫻では助六は「口上」から始まります。
数ある演目でいきなり一人の役者の口上から始まるのは珍しい。
でもこれは成田屋のときだけ。他の演者の時には割愛されます。

助六所縁江戸櫻の場合、口上が終わると黒御簾の中の河東節連中に姿勢を低くし「なにとぞお始めくださりましょう」と一言お声掛けします。すると「河東節(かとうぶし)」という“江戸節”ともいわれる浄瑠璃が始まります。

昔はこの河東節、ご贔屓さんが演奏していたそうですが今は専門の演奏者がいます。
この河東節が使われるのも成田屋のときのみ

他の演者の場合は音楽も変わります。

助六のあらすじ

成田屋演じる助六所縁江戸櫻に沿ってあらすじを追っていきます。

口上

幕が開くと舞台中央に裃をつけた役者が一人。
客席に一言挨拶を述べます。

それが終わると黒御簾の中の連中に「お始めくださりましょう」と低姿勢で声かけます。

その挨拶を機に河東節が始まります。

揚巻登場

江戸吉原の大見世「三浦屋」の格子先に若手の花魁が花見を楽しんでいます。
そこへほろ酔いの吉原トップの花魁、揚巻が八文字を踏んで登場。

この酔いを見せながらの登場が役者の見せどころと言われています。

床几に落ち着く揚巻のもとに恋人、花川戸助六の母からの文が届きます。
そこには助六が江戸のあちらこちら喧嘩している噂を耳にし、大変心配しているとの内容でした。

意休登場

そこへ揚巻の妹分の花魁の白玉と髭の意休(ひげのいきゅう)が子分を従えてやってきます。

意休は揚巻に夢中。なんとか自分のものにしようと連日三浦屋に通います。
当然、揚巻は意休の度々の口説きにもまったく耳をかしません。

この意休、金は持っていますがあまり評判が良くありません。
揚巻も、もううんざりしています。

そのうち、意休は助六の悪口を言い始めます。
当然揚巻はだんだん腹が立ってきます。

ついには我慢できなくなり、意休に対し悪態をつきはじめると白玉がなだめ、揚巻と一緒に店の中へ。

助六登場

出端(では)と呼ばれる花道からの助六の登場シーン
さまざまな見得で「自分こそ江戸一の男前」をアピールします。

紫鉢巻に紫の蛇の目傘を振りかざし、不思議な出で立ちですがこの男こそ江戸一のモテ男です。

三浦屋へ着くと花魁花魁一同助六の元へ。
意休をそっちのけでみな助六にいたれりつくせり。

当然意休は面白くありません。

さらに助六は
「近頃、この吉原の大きな蛇がでるとよ。毎晩まいばん、女郎にふられるを、恥とも思わず、通いつめる執着の深ぇ蛇だ。」と意休を挑発し始めます。

くわんぺら門兵衛と福山のかつぎ

三浦屋から出てきたくわんぺら門兵衛。
女郎を自分のものにしようとしたところ、総すかんをくらい激怒しています。

そこへ出前持ちのかつぎが登場。

ぶつかったことを機にどっちが悪いと喧嘩になります。

それを見ていた助六は「早く通してあげないとうどんがのびる」とくわんぺら門兵衛をたしなめますが、くわんぺら門兵衛は引っ込みません。
助六はうどんを買い取り、くわんぺら門兵衛にも食べるようすすめます。
ついにはくわんぺら門兵衛の頭からうどんをかけてしまい、当のくわんぺら門兵衛はうどんを自分の血と間違えて大騒ぎします。

「朝顔せんべい」という商品名の煎餅売りの朝顔仙平が登場。
まずはくわんぺら門兵衛をなだめます。
朝顔仙平とくわんぺら門兵衛は助六にお前は何者だと詰め寄ります。

売られたケンカはすべて買う助六。
見事な言い回しで啖呵を切り、さらに意休の頭に下駄を乗せ、「刀をぬけ」と迫ります。

助六の思惑

助六はどうしても意休に刀を抜かせたい様子。
暴れ始めます。途中加勢したくわんぺら門兵衛らは手に負えないとさっさと逃げ出しました。

一人残っていたのは優男の白酒売り。
実はこの男、助六の兄。

助六の正体は曾我五郎時致(そがのごろうときまさ)。
そしてこの白酒売りは兄の曽我十郎(そがのじゅうろう)でした。

実は武士のこの二人、父の敵を狙っているのですが、盗まれた源氏の宝刀友切丸を探しています。

助六が喧嘩を繰り返すのは相手の刀を抜かせるため。
刀を抜かせるために相手を怒らせていると喧嘩をやめるように現れた兄に助六は胸の内を告げます。

そんな助六の想いを知った兄は自分も探すと言いだします。
しかし喧嘩などしたことがありません。
助六は兄に喧嘩の仕方を教えます。しかしながらまったく様になりません。

股くぐり

二人が遊里の客にだれ構わず「股ァくぐれ」と自分たちの股をくぐらせます。股くぐりをしかけて喧嘩を売りはじめます。
これも相手の刀をみるため。
ここでの台詞はアドリブも多く、観客も多いにわきます。
まるでコントのような滑稽な場です。

そこへ店から揚巻が出てきます。
客を見送っているとすかざず助六がその胸ぐらをつかみます。

その客は実は助六の母満江。
満江はこれ以上助六が喧嘩できないよう、派手に動けばすぐに破れる紙でできた着物を渡します。

もしこの着物が破れることがあれば勘当だと告げ、兄の十郎と一緒に去ります。

意休再び

一旦三浦屋へ入って行った意休が店から出てきます。
揚巻は助六と喧嘩を始めないよう、助六を自分の内掛で隠します。

揚巻の隣に座り、また口説き始める意休。
腰かけの下から助六が意休の足をつねり始めます。

意休はさては助六の仕業と察し、これみよがしに説教します。
「そんな根性で『大願成就』するものか。ここな(曾我五郎)時致の腰ぬけめ」。
助六の隠している名を口にし、この瞬間意休は助六の素性を知っていることが判明しました。

意休は兄弟団結して親の敵を討てと意外な意見をします。さらに曾我三兄弟で源頼朝を裏切るのであれば自分も力を貸酢とも言いだします。兄弟バラバラになってしまえばこのように倒れてしまう、と香炉台を切って見せます。その刀こそ助六が探し求めていた友切丸でした。助六はそれを見逃しませんでした。

必ずその友切丸をいただくと助六は意を決し、花道を去っていきます。

水入り

今はほとんど演じられることのない水入り。

助六は三浦屋から出てくる意休を待ち伏せしています。
いざ出てきたところを襲い、意休を殺め、刀を奪います。

通行人は意休の死体を見つけ、助六の仕業と助六の捜索が始まります。

追手から逃れるため助六は天水桶の中に隠れます。
水が勢いよくあふれます。

水から出てきた助六を揚巻が見つけ、自分がタテになり追手から隠します。
最後は助六、揚巻による引っ張りの見得で幕となります。

余談ですが、八代目團十郎がこの水入りを演じた時はファンの女性がこの水を買い求めたとか。

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助六の最大の見どころ

助六の出端(では)は他演目にはなかなか見られない形式。
1688~1704年に約50年間発展をとげた元禄歌舞伎ではこの登場シーンで見せる歩く演技を多く取り入れていました。
江戸歌舞伎ではこの見せ方はあまりないため、助六の出端は今日に見られる希少な演出です。

助六の舞台

三浦屋はじめ、『助六』の舞台は実際の吉原をほぼ忠実に再現したもの。
また、そのほかの店なども当時実際したものだそうです。

江戸一のモテ男の物語は、単にひとつの刀を求めるというもの。
あまりにもシンプルながら今もその人気は衰えません。

それはこの助六の江戸っ子さながらの粋な振る舞いや見得、揚巻の衣装、など誰もが引き込まれる要素が満載なのです。
股くぐりの場はつい劇場が笑いにつつまれるほど。

けっして観る人を飽きさせない場の転換が絶妙の演目と言ってもいいかもしれません

助六を観るならおススメの席

俗にいう、舞台を観やすい席がおススメです。
三浦屋の前の場などはなるべく舞台に近い方が細かい演技まで観れて面白いですが、あまり前だと出端の花道がみえにくくなることも。

紫部はおススメですが、花道は少々見えずらい可能性があります。

助六おススメの席

寿司の「助六」は「揚げ(いなり)」と「のり巻き」の詰合せから助六登場人物揚巻にちなんでつけられたそうです。

ぜひ役者違いの助六を楽しんでください。
それぞれの魅力が発見できるはずです。

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