江戸小紋の種類と選ぶポイント

昔から着物好きに人気のある江戸小紋。

着物の格が高いながら帯次第では幅広いシーンで着られ、シンプルながら洒落ています。

単色ながらその柄によって表情は様々。
一枚は欲しいと思っている方、ぜひご参考ください。

失敗しない江戸小紋の種類と選び方のご紹介です。

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江戸小紋は万能着物

江戸小紋は細かく模様の彫られた伊勢型紙を白い反物に置いて糊をひき、反物を染めます。

元々は江戸時代の武士の裃に使われていた染めの技法で、東京の伝統工芸にも指定されています。
(「東京染小紋」として登録されています。)

その型の種類は数千とも言われていますが、代表格はその一部。
遠目には無地に見えるその柄は江戸時代に幕府から発令された派手な着物を禁止する「奢侈(しゃし)禁止令」に由来するとも言われています。

細かい型染めだからこそ、染め職人の腕が試されます。

一見、着物にしてはシンプルすぎると思われるかもしれませんが、帯で表情が全く変わり、さらに帯を選ばない着物といわれるくらい、江戸小紋一枚あればある程度のフォーマルな場からカジュアルなお出かけ着まで幅広く使えます。

柄によって格が異なるのでそこは注意が必要ですが、他の着物と比較すると江戸小紋の使える幅はかなり広いです。
いくつも着物を持つ余裕がないと言う方には特におススメの着物です。

江戸小紋の種類と意味

江戸小紋はセミフォーマルからカジュアルまで使える万能着物ですが、それも柄や柄の大きさによって格が違ってくるので、柄によって使用シーンは決まります。
まずは江戸小紋の種類と格について。

江戸小紋の三役

江戸小紋の柄で一番格が高い3つ。
「鮫(さめ)」「行儀(ぎょうぎ)」「通し(とおし)」。これを江戸小紋三役といいます。

これらは紋をつければ、結婚式やお茶会などにも着て行けます

鮫小紋

江戸小紋の三役の中で最も格の高いのがこの鮫。「鮫小紋」とも呼ばれています。
さらに鮫小紋の中で一番柄の細かい「極鮫」と呼ばれる柄は一番格が高いとされています。
紀州徳川家で使われていました。
「極鮫」は江戸小紋の「中で一番格が高いということになります。

鮫小紋は小紋で一番古い柄と言われています。
一番格の高い極鮫はほとんど無地にみえるものの、モアレのようなものが出るので着物に表情がでます。
半円形の曲線の積み重なりが光沢にもみえ、着ている人の動きに合わせて表情が変わります。

江戸時代は裃にもよく使われた柄です。

角通し

「筋を通す」という意味の通し。
四角のドットが整然と均等に並んでいることからこの名前と意味がつけられたと言われています。

行儀

細かい点が斜めに並んでいます。仙台藩の伊達家で使われていた柄。
名前の由来はお時儀をするときに身体を斜めに曲げるところからきていると言います。

「礼をつくす」という意味も込められていて、そこから格式の高い江戸小紋の柄となりました。

フォーマルな場に着て行くときは細かい柄を選んでください。

この三役はあまりカジュアルシーンには向きません。

こちらもフォーマルな場に着て行くときは細かい柄を選んでください。

江戸小紋三役

出典:Tadaima Japan左より「鮫(さめ)」「角通し(かくどおし)」「行儀(ぎょうぎ)」

江戸小紋の五役

上記の江戸小紋三役の次に格の高い2種を加えたものを「江戸小紋の五役」と呼ばれます。

大小霰(だいしょうあられ)

薩摩の島津藩が使用した柄。霰が舞うような柄は三役の規律正しい文様とは異なり、着物柄として軟らかい印象があります。

縞(しま)

洋服でいうと、ストライプです。これぞ江戸ッ子職人のなし得た技といえる文様。
特に「万筋」と呼ばれる細かい縞は型紙の糸入れといわれる作業ができる職人が今ではいないと言われています。また、それだけ細かい縞を染められる職人さんも現在は一人のみ。

型紙は消耗品なので、現存している間だけしか染められませんので現在の江戸小紋の縞はとても貴重なものとなっています。

型紙を作るのも染めるのも難しい江戸小紋の縞。

江戸時代、伊勢型紙の彫り師が細かい縞の型紙を作り、江戸の染め職人にこれが染められるかと挑戦状をつきつけたことが始まり。
それくらい染められると染め職人がキレイに染めあげると型紙の彫り師はもっと細い縞の型紙を彫って、染め職人につきつけたといいます。

これがお互いの技術を高める結果となったとか。

江戸時代の職人魂の賜物ですね。

江戸小紋で格の高いものは以上の文様まで。
後はどちらかと言うとカジュアルに位置付けられます。

繰り返しになりますが、紋を入れると色無地同様格式が高くなります。

ですが、五役以外の文様の江戸小紋には紋を入れない方がイキになります

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その他の江戸小紋の柄

江戸の粋を感じるすっきりした文様からシャレのきいた面白い文様まで多種多様なのも江戸小紋の魅力のひとつです。
好みの柄がきっと見つかります。

紗綾型(さやがた)

江戸小紋 紗綾型

出典:染一会

卍を斜めに連続させた柄。元々は中国からの織物に良く見られた柄。
「不断長久」の吉祥紋とされています。

花鳥風月

江戸小紋 花鳥風月

出典:灯屋

江戸っ子らしい遊びのきいた柄です。
花鳥風月という漢字を文様にアレンジしたもの。

剣菱(けんびし)

江戸小紋 剣菱

出典:染一会

剣を十字のひし形にあしらった文様。
名前の印象ほど見た目はとがったようにはみえません。
むしろ可愛らしさがありますね。

宝尽くし(たからづくし)

江戸小紋 宝づくし

出典:染一会

縁起を担いだ文様。
昔はこういった縁起物が人気でした。

胡麻(ごま)

江戸小紋 胡麻

出典:染一会

佐賀藩鍋島家が使用していた文様。
胡麻の実を図案化しています。

菊菱

江戸小紋 菊菱

出典:染一会

加賀前田藩が使用していた文様。
気品ある柄です。上品な柄なのでかしこまった場にも合います。

小桜

江戸小紋 小桜

出典:染一会

小桜の型紙は桜の花びらをした小刀で彫る「道具彫り」という手法で作られています。
ランダムにみえて、鮫小紋と同じく鱗状に並んでいます。

老松

縁起の良い吉祥文様とされています。
画像は老松に宝亀。

大根とおろし金

江戸小紋 大根とおろし金

出典:染一会

江戸っ子らしいシャレ。
大根は食に当たらないとされていたことから、
「大根をおろす」→「大根役者をおろす」→「役(やく)をおろす」→「厄(やく)をおろす」→「厄除け」とされ、縁起の良い柄とされています。

七宝つなぎ

江戸小紋 七宝つなぎ

出典:染一会

限りなく伸びるという縁起物。
「輪違い文」ともいわれます。

七つの宝とは、金・銀・瑠璃・は璃・珊瑚・めのう・しゃこを指します。

むじな菊

江戸小紋 むじな菊

出典:染一会

菊の文様をむじなの毛のように散らしたむじな菊。
見方によっては立体的にもみえるので、ちょっと撫でたくなるような文様です。

失敗しない江戸小紋の選び方

一つ持っていると何かと重宝する江戸小紋ですが、柄の種類も豊富なうえ、単色ゆえ色のバリエーションも豊富。
何を基準にどう選んでいいのか迷います。

そこで江戸小紋選びのポイントをまとめてみました。

目的を決める

江戸小紋は上記の通り、柄によって「格」が変わってきます。

結婚式や子どもの入学式、さらにお茶会などに着ていくならできるだけ格の高いものを。
おしゃれ着、お出かけ用ならば他の気に入ったシャレ柄などがおススメ。

晴れやかな場に着て行きたいのならなるべく明るい色を選んだほうが単色ならではの華やかさがでます。

鮫小紋の墨色や鼠色、渋紫ならお通夜や法事などにも着て行けます。

おしゃれ着におススメの柄

江戸小紋の柄は数千とも万とも言われているので、好みの柄を見つけるしかないのですが、迷うだけですね。
江戸小紋は江戸で栄えた柄。迷ったら粋な変わり縞や鱗などが凛とした雰囲気がでます。
縞や鱗なら帯次第ですっきりみえたり、華やかさがでたりと幅広く使えます。

可愛さが欲しければ動物柄や小花柄がおススメですが、幾何学的な文様の方が飽きがきません。

変わり柄などいろいろチェックしてみてください。
遠目では無地に見える江戸小紋ですが、柄によってその表情は大きく変わります。

意外と奥深い江戸小紋の柄。
柄に加え、その色数も百を超えるとも言われています。

柄と色の組み合わせは無限数となります。
店頭ですべての色と柄の取扱いはありませんが、お店によってはサンプルを取り寄せてくれます。

必ず実物(反物)を顔の近くに当てて選んでくださいね。

希望の柄と近い柄(白の出方が同じようなもの)を当ててみましょう。

色に迷ったら明るめの色の方が何かと使えます。
江戸小紋は単色なので「ちょっと派手かな?」と思える色でも意外としっくり着られます。

顔映りの良さは自分で判断せず、誰か第三者に判断してもらってくださいね。

江戸小紋を買う時の注意

江戸小紋ならではの注意点もあります。

値段に注意

着物は工芸品です。当然、工数がかかるものがその分値段も高くなってきます。
単色の型染めの江戸小紋ですが、反物で最低20万円台くらいとなっています。

その一方、10万円以下のものがあります。

これはシルクスクリーンで染めたもの。
いわゆるプリントです。

職人の手で彫られた型紙の模様は目には分からないほど微妙な大きさの誤差があります。
職人の手で染められた反物は一見分からないほどの多少の染めムラがあります。

それが着た時の動きや光の加減で着物の表情を作るのですが、機械で作られた型にはその誤差がないため、すべて均一です。
そのため、着た時に平面になり顔映りも悪くなります。

単色の型染めだからこそ、着た時に各段の差がでます。

ここは安い!で安易に手を出さす、じっくり選んでください。

もしそれでもプリントものでいいと言う場合は絹でなく、ポリエステルなどの化学繊維のものがおススメ。
汚れても洗濯機で洗えます。

絹は専門店にクリーニングに出すと数千円かかりますが、ポリエステルは雨も気にせず、汚れたらすぐ洗えるのがうれしいですね。

新作柄に注意

近年、着物のプロデューサーコラボの新作柄などが販売されている場合があります。
これからはほぼプリントの反物。ですがそれなりの金額になってきます。

もちろん着物を良く知りつくした方の監修のものなので、柄は素敵ですが本来の江戸小紋と言えるのかどうかは「?」がつきます。

その値段にあった代物なのかどうかは重々考えてください。

江戸小紋購入におススメ店舗

なかなか敷居の高いのが呉服屋。でも欲しいとなったら「初めてなんですけど」と相談すればいろいろ教えてくれるはずです。

竺仙(ちくせん)

創業天保13年から続く竺仙は浴衣始め、染めものを中心とした問屋さん。
小売もしています。

日本橋の本店では山積みの反物があり、自分にあった色をその場で見つけられます。
その色を選んだうえで希望の柄を伝えれば、染めてくれます。

たまに日本全国の百貨店呉服売り場で江戸小紋展を開催しているので、そういった機会に見るのも手。
竺仙のスタッフさんがいらっしゃる場合もあるので気軽に相談することもできます。

竺仙
住所:東京都中央区日本橋小舟町2-3
電話:03-5202-0991
公式サイト:https://www.chikusen.co.jp/

染一会(そめいちえ)

江戸小紋専門店という珍しい呉服店。
手染めによるお誂え用反物を店内にズラリと用意されているので、いろいろ試せます。

染一会
住所:東京都港区北青山3-10-1
電話:03-6410-8552
公式サイト:https://www.someichie.jp/

可愛らしさと気品さを併せ持つ江戸小紋。
動きに合わせて表情を変える着物なので、着物好きの中でもファンは多いですね。
帯の組み合わせ次第で、ガラッと雰囲気が変えられるのも魅力の一つです。

持っていて損はない一枚。
自分のお気に入りを見つけてください。

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