飛騨春慶とは 特徴と選び方

飛騨春慶とは 特徴と選び方

出典:JTCW2021

木目を生かした黄色かかった美しい深い飴色・琥珀色をした漆器、飛騨春慶。
森林面積が日本第二位という岐阜ならではの良質の木材を木地とした漆器です。

一目みればそれと分る飛騨春慶の魅力とは。

決して特別なものでなく普段使いしたくなる漆器です。

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飛騨春慶とは

岐阜県高山で400年ほど作られている伝統工芸です。
岐阜県は元々良質な木材が採取できる土地。
木目の美しい木地を活かした漆器は岐阜県だからこそ発展したといってもいいかもしれません。

「高山塗」「美濃漆器」などと呼ばれてもよさそうですが、その名の由来は鎌倉時代の陶工・加藤景正の名作「飛春慶(ひしゅんけい)の茶入」と言われています。

その茶入れの色目が似ていたことから産地飛騨高山になぞってその名になりました。
戦争のため一時は衰退しますが、高山という観光地からお土産需要なども高まり、また復活しました。
それは今も続き、国内だけでなく海外の観光客にも大人気です。

江戸時代(1607年)から作られたこの漆器は1975年経済産業省に伝統工芸品として指定されました。

曲物や挽物といった木地師と呼ばれる木地作りを専門とする職人と塗師(ぬし)と呼ばれる塗り専門の職人の卓越した技術による丈夫で美しい漆器は国内外の観光客に大人気です。

飛騨春慶の歴史

その土地のほとんどが山・森林の岐阜県。
400年ほど前、高山城下で社寺の建造に携わっていた名工高橋喜左衛門が建材を削りだすため打ち割った木の目の美しさに驚き、この木材で蛤盆を作成。飛騨高山藩第2代藩主金森可重の子である金森重近に献上します。これを気に入った重近は高山城御用塗師成田三右衛門に透き漆で塗り上げさせたところ、その色目が加藤景正の名作「飛春慶(ひしゅんけい)の茶入」に似ていたことから飛騨春慶と銘々されました。

透明感があり、木目を活かした美しい琥珀色の漆器は藩主への献上品として重宝されました。

金森氏は茶の湯にも精通していたため、春慶の茶道具を次々と作らせました。
武士の道具だった飛騨春慶も幕末に問屋が出現したことから庶民へと広まっていきます。

実際、現代でも飛騨地区の家庭には必ず飛騨春慶のアイテムは一つはあると言われています。

アイテムとして茶道具だけでなく曲げモノと呼ばれる盆やわっぱのような形状のものや切り出した木材からくりぬいて作られる挽き物まで多種多様。

近年は海外で作られた木製楽器に漆塗りを施したり、透明感ある艶めくその特色を活かしたアクセサリーなども作られています。

2016年文化庁より「飛騨匠の技・こころー木とともに、今に引き継ぐ1300年」に認定。

飛騨に伝わる匠の技術の一つとし、高山のみならず日本の貴重な工芸と認証されたことになります。

飛騨春慶の特徴

飛騨春慶は、経年によりどんどん漆が透け、美しい木目が浮き出てきます。
他の産地の漆器とは一番異なる特徴と言っても過言ではありません。

拭き漆も次第に艶を増し、使い手によって様々な表情が出てきます。
使うほどに楽しめるのが最大の魅力ですね。

個人的には琥珀色の独特な風合いが大好きです。
一目で飛騨春慶と分るその色合いは、主張しすぎない光沢がなんともいえません。

製造工程

飛騨春慶は、木地師と塗師の二人三脚によって生み出されます。
完全分業制となってそれぞれの匠の技が合わさって作られ、さらに使い手により完成します。

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【木地の作成】
飛騨春慶に使われる木は、ひのき、さわら、栃など。
それらを5年ほど時間をかけて乾燥させます。
木地製作には木地師と呼ばれる専門の職人がいます。

木地師のなかでもさらに制作物によって職人さんが分れています。

角の盆や重箱などは板目をヘギメにして作ります。板のつなぎ目にはニカワを使い、漆器にはボンドなど化学接着剤は使用しません。

だから子供から大人まで安心して使用できるのです。

これを作る木地師は「ヘギメ師」とも呼ばれます。

わっぱなど板を曲げて作る曲げ物は主に丸盆や弁当箱などになります。
薄い板を曲げ、ニカワで接着後ヤマザクラの皮を使って縫うようにして固定させます。

この曲げ物を作る木地師を「曲物師」と呼ばれます。

ろくろを使って回転させながら削りだす挽物といわれるものは椀や菓子器、お盆などがあります。

この挽物作る木地師を「挽物師」と呼ばれます。

木地はできたら塗師へと引き渡されます。

【目止め】
木地にまずは目止めという作業をします。
木地に目の細かい粘土を塗っていきます。これにより漆の塗りむらを防ぎます。

この作業は漆の仕上げにも影響する、塗りの中でも一番重要な工程ともいわれています。

【下塗り】
大豆をつぶした豆汁(ごじる)を2~3回塗ります。
このあとに表面をサンドペーパーで磨き、表面を滑らかにします。

【摺り漆】
生漆に荏(え)の油をまぜ、木地に摺りこんでいきます。塗っては布で拭き取る作業を繰り返します。
これが飛騨春慶特有の木目を活かした仕上がりにつながります。

【上塗り】
透明度の高い漆を塗っていきます。
透明な漆は各塗師が生漆を精製したもので、ブレンド法も様々。その技法は門外不出とか。

上塗りが完了したら乾燥させます。
塗師それぞれのふろと呼ばれる乾燥室を設けていますが、数分ごとに回転させないと均等に乾かないそうで、手放しには放置できないそうです。

漆が乾燥するには温度(15~25℃)と湿度(65~75%)の環境が適していると言われています。
普通塗料は水分を飛ばすことにより乾燥させますが、漆は適度な湿気がないと乾かない特性をもっています。

面白いですよね。

カンタンに大きな工程を記載しましたが、もっと細かい作業は数知れず。
木地師さん・塗師さんそれぞれ神経を尖らせて作り出した賜物です。

飛騨春慶の選び方おススメアイテム

花入れはシンプルでその光沢の美しさからおススメです。
重箱などもシンプルながらその色がハレの日の料理を引き立たせてくれます。

飛騨春慶のアイテムのほとんどは蒔絵などの装飾がありません。

その形と色の光沢の美しさを楽しむものです。

アクセサリーなども多く生産されているのでぜひチェックしてみてください。

飛騨地区以外では専門店などでの購入をおススメします。
職人によってはかなり高価になりますが、偽物を使うのは意味がありません。
飛騨高山でもお土産用の安い弁当箱などが販売されていますが、それは本来の飛騨春慶の漆器ではありません。

器の内部底の角に塗料がたまっていたりする粗雑なものも中にはあるので、本物の飛騨春慶をよく見てから購入してください。

きちんと使えば経年変化が楽しめる漆器。
ちゃんと見極めて購入してくださいね。

漆の手入れについてはこちらをどうぞ。
> 漆器の手入れ カビや欠けはどうする?

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