浮世絵の見方と楽しみ方

浮世絵は日本だけでなくもう世界中で大人気のアートです。
なぜそんなに人を魅了するのでしょうか。

元々アートとして作成されていない浮世絵は見方によって様々な楽しみ方ができます。

浮世絵好きな方もそうでない方も、今一度浮世絵の鑑賞ポイントと楽しみ方を確認してみませんか。

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そもそも浮世絵とは?

浮世絵の正式名は「錦絵」。
元々墨色一色だった版画を幾版にも版板を重ね、多彩な木版技術が確立されてからそのように呼ばれるようになりました。

浮世絵とはその名の通り、
その時代を描いたものです。

歌舞伎役者の役者絵は今でいうブロマイド。
名所は今でいうガイドブック。
美人画は今でいるファッション誌。
そして遊女や江戸の風情を描いた様は、まさに今でいうタウン雑誌の役目を担っていました。

絵師は版元の依頼に合わせ、その画をおこし、彫師が色数分版を彫り、摺師が美しくずれなどないように何部もの画を摺りました。

庶民はそこから何を観たのでしょうか。

浮世絵はココを見る!鑑賞ポイント

今や美術館などで展覧会をやると大反響の浮世絵。
観る人はそれぞれに楽しんでいるかと思いますが、こんな鑑賞ポイントがあげられます。

江戸の生活

浮世絵には「美人画」「風景画」などありますが、何気ない日常の一部を切り取った画も多く見られます。

以下は歌川国芳の「五行之内 朝顔の土性」。
江戸の夏の1日の始まりが垣間見れます。口にくわえているのは「房楊枝」と言われる当時の歯ブラシ。左手に持っているのは歯磨き粉です。

歌川国芳の「五行之内 朝顔の土性」

歌川国芳:五行之内 朝顔の土性

江戸っ子は園芸好き。
万年青はじめ、朝顔は観賞用だけでなく、品種改良まで行っていたといいます。

また、夏の夜には子供も若い女性もこぞって蛍狩り。
子供が虫籠を持っているところをみると、今の蛍狩りと違って本当に採取していたようです。

喜多川歌麿 蛍狩り

喜多川歌麿:蛍狩り

江戸といえば屋台。
当時世界一と言われたほど人口の多かった江戸。
食は重要な文化でした。

天ぷらや寿司、そばなどの屋台がズラリと並び、江戸っ子の胃袋を満たしていました。

今でいうファーストフード。
サラッと食べてすぐに帰るというスタイルです。

客は食べた後の手を屋台の暖簾で拭いていたことから「暖簾の汚いところは美味しい」と都市伝説?も出たほど。

ファッション

浮世絵では歌舞伎役者や花魁、さらに茶屋の看板娘などが多く描かれています。
それは今でいうファッション誌と同じ役割を果たしていました。

その美人画や役者絵を見て江戸っ子は流行を知り、また同じ柄の浴衣や帯結びをまねたりしていたようです。
江戸っ子はおしゃれ上手で流行にも敏感でした。

浴衣の反物で「裏地が無地というのは恰好悪い」と町民が言えば、染職人がプライドをかけ、表裏異なった柄を染め上げるといったように、着る側と作る側のこだわりがぶつかることもあったと聞きます。
それがゆくゆく東京に染の文化を根付かせたのかもしれません。

夏場になると江戸っ子は浴衣を1日3回は着替えたというから、その量もかなり多かったのではないでしょうか。

女性はというと、普段は小袖と言われる袖口の小さな着物を着ていました。
そして今ではまず見られない長い帯をゆったりと結んでいます。
江戸後期になると今でも結ばれような帯の形となっていきます。

当時流行していたであろう着物や浴衣の柄や帯の結び方を浮世絵から読み取るのも楽しいですね。

スポット

東海道五十三次や富嶽三十六景に限らず、浮世絵は当時の町や風景をそのまま切り取っています。

例えば浅草吉原など今現存しないスポットも、花魁や遊女などふくめありありと描かれています。
都内の数々のスポットはどのくらい変わったのでしょうか。

浮世写真家の喜千也氏が同じアングルで数々の名所を撮影しています。
面白いですよね。

すっかり風変りしてしまった風景やどこか名残りのあるものまで。
江戸時代、このように江戸っ子が同じ風景を見ていたと思うとさらに灌漑深いものがあります。

長い歴史の中、写真もない時代に絵師たちはそれぞれ見た風景に何かを感じ、それを切り取りました。
もちろん、デフォルメしていることもあります。
世界でも有名絵画トップ3にはいるといわれている葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」は当時そんな大きな波が起こっていたわけではありません。北斎ならではの構図をとった形です。

東海道五十三次を描いた歌川広重の「名所江戸百景」はかのゴッホやモネなど海外の画家にも多大な影響を与えたと言われています。

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浮世絵アートとして楽しむ

木版画でありながら、その細部まで丁寧に表現されたうえ、色鮮やかな画はやはり魅力。
世界で版画技術はありながらここまで多彩にかつ画として大胆に表現されているものは唯一無二のアートと言っても過言ではありません。

動物を擬人化したものや、男女の営みを描くもの、何気ないものまでがどうしてこうもアートとして魅了するのでしょうか。

一つは版画技術もあります。そしてなにより浮世絵は他絵画にはない独特の構図で描かれています。
神奈川沖浪裏などの大胆な構図や画面いっぱいの歌舞伎役者の大首絵、または広重の隅田川にかかる「大はし」(現在の新大橋)は思い切り俯瞰で描かれています。

どれも国内外探してもなかなかない構図のものが多いように思います。

日本画とはまた違う日本のアートですね。

「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」は特に広重の絵力に加え、まるで動画のような夕立ちを見事に表現しています。これは絵師だけでなく彫師、摺師の技術の高さが顕著に現れている一枚と評価されています。

通年浮世絵が楽しめる美術館
【太田記念美術館】
東京都渋谷区神宮前1-10-10
公式サイト:http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

浮世絵アイテム

浮世絵は美術館だけで楽しむものではありません。

浮世絵のおススメアイテムをご紹介します。

江戸うちわ

江戸うちわ

出典:伊場仙

江戸時代から「うちわ絵」として最初からうちわの型に描かれたものがあります。
そして今もなお「江戸うちわ」として販売されています。

当時のものはほとんどうちわとして使用されているため、版も含めてあまり残っていないそうですが日本橋の「伊場仙」では今でも作成・販売されています。

100万人都市の江戸では夏場、うちわは欠かせないアイテムでした。

ここにもこだわりをもった江戸っ子。
浮世絵のうちわは大人気だったそう。

日本橋の小舟町は竹や和紙を扱う店も多く、そこからうちわの製造も盛んでした。
この近辺は当時「うちわ河岸」とも呼ばれていたそう。

江戸木版

浮世絵は「江戸木版画」として経済産業大臣指定の伝統工芸に指定され、今も東京下町中心に作成されています。

もちろん、当時の版木ではありませんが北斎や広重、歌麿呂などの絵が忠実に再現され、復刻版も摺られています。

また、職人さんが新しいデザインを起こし、それを版画として数々販売されているので、ちょっと見てみると楽しいですよ。

昔は絵師・彫師・摺師の分業制でしたが、今は大抵一人の職人さんがすべての作業を行っています。

浮世絵って絵画としても今一つ鑑賞ポイントが分らないという方、ぜひちょっと見方を変えてみませんか。
意外な発見があるかもしれません。

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