山中塗は石川県に伝わる伝統工芸。
茶道具に始まり、今や暮らしに沿うアイテムが多く作られています。
石川県は輪島塗・金沢塗など漆器の産地。
山中塗の特徴って?輪島塗とは何が違う?など。
もっと身近に感じていただきたい山中塗のご紹介です。
山中塗とは
山中塗とは石川県加賀市に安土桃山時代から伝わる漆工藝です。
日本全国の30ほどの漆器産地の中でもその生産量はトップであり、それは漆器ほかに合成樹脂も駆使した生産を他産地より早く取り入れたことにあります。
もちろん漆の技法がかたくなに受け継がれていて、千筋挽(せんすじびき)、そして朱溜塗(しゅだめぬり)、独楽塗(こまぬり)、色塗漆器など多種な技法によりそのアイテムの幅広さが魅力です。
歴史
約400年前、木地師の集団が加賀市山中温泉の上流に移住したことが始まりとされています。
白木地の挽物のみやげモノ中心だった器に漆が施されるようになり、一気にその技法は高まっていきました。
江戸時代中期には、湯治客にお椀やお盆、土産用の遊び道具を作って売るなどしていたという記録があります。
塗師(ぬし)を京都や会津などから呼び寄せ、山中塗の発展がさらに飛躍されます。
木地師で人間国宝が出たのも山中漆器が初めて。
1975年、経済産業省より伝統工芸として認定されました。
特徴
漆器はたいてい木地と塗り、蒔絵など分業制ですが、山中塗の特徴はろくろによる木地のクオリティにあります。木地の肌に極細の筋を入れる加飾挽きという技法は山中塗の代表格であり、その技法を活かした茶道具の棗(なつめ)には定評があります。
木地は「縦木取り」といって、木目の縦方向(年輪に沿って)に取ります。
これは山中漆器の独自の手法とも言われていて、木の繊維に沿って切り取る「横木取り」と比べゆがみなどが少なく、薄くても強い器ができます。
ろくろの技法は細かい線を等間隔で刻む「千筋」や反対にランダムに刻む「荒筋」、その他「毛筋」や「糸目」といった細い筋を入れる技法、さらに「トビ筋」「稲穂挽き」など「加飾挽き」の伝統的技法20種を超える技法があります。
これは他の漆器産地ではありません。
現在、自然の木目と美しい蒔絵が山中塗の特徴とされています。
木地のろくろの技術から丸い製品が多いのも山中塗の特徴と言えるかもしれません。
塗りや蒔絵などがクローズアップされがちな漆器ですが、木地の技術が卓越している漆器産地とは珍しいですね。
縦木取りの木地はゆがみにくいのが特徴です。
輪島塗との違い
同じ石川県で3つの漆器産地があります。
「輪島塗」「山中塗」「金沢塗」です。
「塗りの輪島」「木地の山中」「蒔絵の金沢」とよばれ、それぞれの得意とするところはあるようです。
とくに漆器でも知名度の高い輪島塗。
山中塗との違いとはあるのでしょうか。
輪島漆器は塗りの工程が20もあり、当然その仕上がりの美しさにあります。
山中漆器は繰り返しになりますが、木地の美しさやその形のバリエーションの豊富さも定評があり、一部輪島漆器の木地にも使用されています。
山中塗選び方
山中塗は合成樹脂素材のものも多く生産されているので、本漆製品かどうかよく見極めてください。漆は使っているうちに独特の艶がでてきて、購入当時よりさらに深みがでてきます。
プラスチックでなく、自然素材ならではの味わいを楽しんでいただければと思います。
見た目はなかなか見極めにくいですが、まずは値段がまったく異なります。
漆だからといって、驚くほど高いということはありませんが、やはり少々高めではあります。
また、仕上げなどに「ウレタン塗装」となっているものは漆ではありません。
木地の木目のキレイさを楽しみたいなら「拭き漆」がおススメです。
木目を活かした漆塗装技法のひとつです。
蒔絵があるものは普段使いにするには手入れにちょっと気を使います。
山中塗おススメアイテム
茶道具から現在の暮らしの器まで、山中塗アイテムは幅広く展開されています。
今回は特に山中塗のろくろで薄く仕上げる木地を活かしたアイテムをピックアップ。
山中ウスビキライト tsubomi(ツボミ)
薄挽きというろくろの技法で厚さ1ミリ以下にする山中塗ならではの技術を活かしたライト。
木を通した光はやんわりと軟らかく、ぬくもりを感じます。
透けてみえる木目も美しいですね。
たまゆらボウル
木目が美しく、ちょっとゆらゆらとするボウル。
底が厚め、淵はかなり薄くなっているため、フォルムもシャープさがでています。
山中塗 トールカップペア
山中漆器特有のろくろで削った木地のフォルムの美しさと、スタイリッシュな二色塗りのトールカップ。色違いのペアカップはギフトとしても喜ばれそう。
軽くて熱伝導率の低い漆器は熱いものは冷めにくく、冷たいものはぬるくなりにくい優れた機能もあります。
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