年々夏の暑さは深刻になり、夏場の着物は都度問題視されます。
近年6月になると正絹の単衣でさえ暑いですよね。
夏着物で断然おススメは、麻着物。
絽や紗ほど透け感は少ないながら風を通すその軽やかさが魅力。
着ている本人はもとよりその姿を見ている人に涼を与えてくれますね。
今回、見た目にも涼し気で大人可愛い新潟県の小千谷縮をご紹介。
夏の着物美人を目指して今年の夏は麻着物に挑戦してみませんか。
小千谷縮(おぢやちぢみ)とは
小千谷縮(おぢやちぢみ)とは新潟県の小千谷周辺で作られている麻布のこと。
上布と呼ばれる古来越後魚沼地方の特産、麻織物に縮をかけたものが小千谷縮です。
通気性に富み、着やすさから着物初心者から上級者まで幅広く着られています。
歴史
新潟県の織物の歴史は古く、1200年ほど前に始まったとされています。
小千谷縮の生産が始まったのは江戸時代に入ってから。
それまでの越後麻布にシボを入れるような加工をしたのが始まりです。
播州明石からきた堀次郎将俊氏が行ったと伝わっています。
1975年国の伝統工芸品に指定され、2009年にユネスコ無形文化遺産に指定されています。
日本で初めて重要無形文化財とユネスコ無形文化遺産に登録された織物です。
制作工程
小千谷縮の原料は苧麻(ちょま)という麻。
呼び方は様々あります。福島で有名な「からむし」も同じ麻です。
小千谷縮のシボはどうやってできるのか、また伝統工芸に指定された「雪晒し」とはどういったもの?
小千谷縮の製造工程を見てみましょう。
1. 糸づくり
刈り取った苧麻を、数時間清水に浸けて皮をむき、繊維だけを取り出し乾燥させます。
出来上がった糸状のものが青苧(あおそ)といいます。
2. 手うみ
青苧をさらに裂いて細くし、より合わせてつないで、均一の太さの糸を紡いでいきます。
ベテランの職人でも一日に紡げるのは5~6グラムほどと言われています。
着物一枚に、経糸と緯糸合わせて山手線一周分の糸が必要とも言われています。
着物一枚分の糸つくりは1年かかるとも。
3. 絣(かすり)作り
図案に基づいて木羽定規つくり、墨つけをします。
墨付けした箇所にくびり糸で 固く巻き染めます。
4. 織り
準備された経糸に、模様付けされた緯糸を1本1本柄を合わせながら織りあげていきます。
小千谷縮は緯(よこ)糸に強い撚(よ)りをかけます。
これにより小千谷縮特有のシボができます。
5. 湯もみ
木舟にはったぬるま湯の中に織りあがった布を入れ、手や足で強く揉みます。
これが小千谷縮特有の風合いになります。
6. 雪さらし
重要無形文化財「小千谷縮・越後上布」指定工程のひとつ。
豪雪地帯の新潟ならではといえます。
2~3月の晴天の日に縮を雪の上にひろげます。これはひとつの漂白作業で、オゾンが麻布に含まれる色素を分解し漂白するとされています。
約800年前から行われている工程です。
小千谷縮の魅力
繰り返しになりますが小千谷縮には「しぼ」という細かいしわ(凹凸)があります。
このシボが夏時期に汗をかいたときも肌にまとわりつかなく快適な着心地になります。
原料の麻の特性で速乾性が高く、常にサラッとした感触です。
さらに放熱効果もあるため、とにかく涼しいのが特徴。
さらに汗をかいても家で洗えます。
麻はしわになりやすい素材なのですが、小千谷縮のシボがしわを目立たなくさせます。
さらにこのシボにより無地でも独特の表情が出ます。
麻特有のパリッとごわつく印象はなく、やわらかでサラッとした着心地が最大の魅力です。
小千谷縮の着る時期
一般的に麻の季節は7~8月とされていますが、近年の温暖化により6月中旬以降から着ても問題ないかと思います。
もう少し早く着たい場合は、麻100%より透け感の少ない綿麻がおススメです。
麻は9月に入るといくら気候が暑くても、すこし季節がずれているように見えます。
この時期も綿麻くらいがちょうどいいです。
また、色柄にもよりますので、9月にはいったら少し濃い色目の落ち着いた、秋の風情を感じられる色味がおススメ。
コーディネートでいうと小千谷縮には博多帯が良く似合います。これは男女共通。
見た目涼し気でキリっとした印象に。
小千谷縮はシンプルだからこそ帯で遊んでください。
ただし格の高い帯は合わせられません。
小千谷縮の手入れ
麻は家でも洗えます。
手洗いがおススメですが、洗濯ネットに入れて洗濯機でも洗えます。
着物用の洗濯ネットがあり、しわになりにくい仕様になっているのでこちらを利用すると洗った後に楽です。
麻はしわがつきやすいので、アイロンが大変です。
洗濯用糊などうまく利用してパリッと仕上げましょう。
色落ち・縮みには注意。お湯では絶対洗わないことです。
心配な方はクリーニングに出しましょう。
麻なので、普通のクリーニング店でも取り扱ってくれるはずです。
クリーニングに出す場合はかならず「汗抜き」をお願いしてください。
汗が残っていると黄ばみの原因になります。
麻は軽やかでかわいらしさもある一方で、大人の凛とした雰囲気も出せます。
老若男女で愛される夏着物。
麻着物に関してはぜひこちらもご参照ください。
コメント