美しい色彩の磁器、九谷焼。
その鮮やかな色彩は誰もの目を釘付けにします。
格が高く、高級なイメージの九谷焼ですが、日常使いこそその魅力が増します。
近年はその多彩な特徴を活かし、キャラクターコラボアイテムなども販売されています。
知ればもっと楽しい九谷焼とは?
九谷焼とは
石川県の伝統工芸のひとつ。石川県能美市周辺で作られています。
多彩で艶やで細かい線がその技術の高さが一目で分ります。
釉薬の上に顔料で絵付けを行い、再度焼く「上絵付け」と呼ばれる技法が特徴。
「上絵付けを語らずして九谷はない」
という言葉があるほどです。
五彩手・青手・赤絵・金襴手などの技法があるのも九谷焼ならでは。
色鮮やかな九谷焼の器はこれらの技法によって生み出されています。
九谷焼の特徴
具体的な九谷焼の特徴について詳しくみていきます。
なんといってもその色鮮やかさが最大の九谷焼の特徴ですが、特に「青手」と呼ばれる赤色を使わず、青、黄、緑、紫のみを使った色彩が九谷焼最大の特徴と言っていいかもしれません。この色使いは「日本の油絵」とまで言われています。
この後説明しますが、九谷焼には焼かれた時代により「古九谷」と「再興九谷」に分かれます。
技法も少々異なり、古九谷は先に述べた「上絵付け」と呼ばれる技法で作られていました。
それは素焼きをせずにいきなり本焼きし、その器に釉薬を厚塗りし、絵付けするという方法。
これによりまるで油絵のような美術品と言っても過言でないほど鮮やかな器に仕上がります。
また、比較的早いうちから器の成形する職人と絵付けの職人を分け、完全分業化したことによりそれぞれの技術が飛躍的に向上したともされています。
九谷焼特有の特徴はその歴史をみると理解できます。
九谷焼の歴史
九谷焼は加賀藩の支援により発達しました。
大聖寺藩の武士、後藤才次郎中心に磁器生産が始まりました。
繰り返しになりますが「青手」、「九谷五彩」などの技法はこの時期すでに確立しました。
ただ、理由は不明ですが数十年で一度九谷焼は廃窯してしまいました。
この時期までの九谷焼は実は有田で焼かれていたそうですが、そこの生産の流れがどうなっていたかも不明です。
こういった古九谷はその美しい磁器に少しミステリアスな背景があります。
古九谷時代
九谷焼の始まりは江戸時代前期。
現在の石川県加賀市は昔「九谷村」という村だったことからこの名前がつきました。
狩野派の名匠でもある久隅守景の指示をあおぎ作られました。
青・黄・赤・紫・紺青の五彩で彩られた鮮やかな色彩の器はこのころすでに作られていました。
実はこの時代、九谷焼は佐賀県有田で焼かれたということが近年の調査で分かったそうです。
それどころか、最近は絵付け工程まで含めて、すべて有田で行われたのではないかとも言われているそうです。
ただ、古九谷の窯跡からは色絵磁器片も見つかっています。
元々九谷焼は加賀藩の保護が大きいとされていますが、なぜか始まって数十年で一旦途絶えてしまいます。
後世、この時期を「古九谷」と呼び、今では希少価値の高い美術品とされています。
再興九谷時代
一旦閉窯になった九谷焼。
再び作られたのは100年のちと言われています。
時代が変わり、古九谷の色彩の華やかさを再認識した当時、古九谷のような九谷焼磁器の再生を図ろうと、また加賀藩が乗り出します。
呼び寄せたのは京焼の名工、青木木米。春日山窯が始まりとされています。
それから赤絵細描画の「宮本窯」、金襴手(きんらんで)の「永楽(えいらく)窯」、古九谷の再興を目指した「吉田屋窯」ほか「小野窯」、「庄三窯」など続々と開窯。
各窯独自の趣向を凝らし、九谷焼の復興は思いがけないほど早く、かつすさまじい発展をとげました。
成形と絵付けの職人を分け、完全分業化を成し遂げたのもかなり近代的な発想と言えます。
このころは絵付けに使用される赤の塗料が滲みにくいということから、赤を基調とした繊細な線で細かい文様を描いたものなど、新たな表現も編み出されました。一般的には「赤絵」と呼ばれています。
時代は明治にはいると、廃藩になり、当然加賀藩の支援を受けられなくなった九谷焼の窯元ですが、日常使いの器だけでなくさらに美術品としての価値を高めるため、さらなる技術を高めていきます。
結果、輸出が発展したころの1873年に開催されたウィーン万博では「ジャパン・クタニ」と欧米諸国から高い評価を得ることとなりました。
以降、日本を代表する陶磁器のひとつとなりました。
1975年5月、国の経済産業大臣指定伝統工芸品に指定されました。
九谷焼の選び方
美術品としての評価の高い九谷焼。
どうしてもその高級磁器というイメージがあるため、自身の生活には無縁と思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
九谷焼のような華やかな器は、使いにくいという声もよく聞きますが、実際煮物などの田舎料理を盛ると絶妙なバランスとなります。
もちろん、洋食やフレンチ、中華にもよく合います。
最近は古典な模様や柄だけでなく、マンがキャラクターを描いた器なども作られているようですが、古典柄のほうが食事用としては使いやすいと思います。
余白なくびっしりと絵付けが施されているようにイメージのある九谷焼ですが、割とシンプルなものもあります。そこは好みで選んでください。
磁器は比較的使いやすいですが、金彩のはいったものは電子レンジ・食洗器は使用不可です。
また、九谷焼は磁器だけでなく陶器もあるので素材は注意してください。
(陶器は金彩の有無に関わらず電子レンジは避けたほうが安心です)
使い方は注意して選んでください。
九谷焼代表窯元
九谷焼は基本的に絵付け技術は決まっているものの、窯元によってかなり得意とするものがあり、かなり個性がでるそうです。
再興九谷時代では成形と絵付けの分業制だった窯元も今では概ね一貫性のところが多いようです。
好みの趣向を知れば、購入の時にも見つけやすいですね。
ぜひご参考ください。
鏑木商舗(かぶらきしょうほ)
九谷焼最初の商店として明治に創業した窯元。
「九谷焼の価値を世界に広める」と名工を呼び寄せ、工房を開いた絵付け専門の窯元です。
明治から大正にかけては国内外の万国博覧会にも出品し数々の賞を獲得してきた歴史があります。
金沢には自社店舗もあり、食事処なども展開。
石川に遊びに行ったら、ぜひ足を運びたいです。
九谷焼を日常に取り入れやすいアイテム・デザインのものが多いのが魅力的です。
アクセス:
「金沢駅」より路線バス乗車「香林坊」下車徒歩約5分
小松空港からリムジンバスの場合も「香林坊」下車徒歩約5分
九谷光仙窯
成形から上絵付まで一貫し作陶しています。
「陶磁器技術保存指定作家」の認定うけたを三代目・利岡光仙氏は皇室に茶碗を献上するなど伝統工芸士として数々の業績をあげています。
現在も九谷焼をもっと身近にということから工房ではろくろや絵付け体験もでき、石川県の観光スポットにも度々紹介されているほど。(工房見学含め有料となっています)
一度体験してみればちょっと手の届かないと感じていた高級器が身近に感じるかもしれません。
九谷光仙窯の器は金彩なども多く使われているので、贈り物などに最適です。
アクセス:金沢駅より野町経由北鉄バス「野町バス停」下車徒歩5分
【工房見学】
時間:9:30~15:30
所要時間:40分~60分
見学料金:11,000円 (グループ単位)(1名様~20名様まで)
予約:076-241-0902 2日前までに要予約
錦山窯
110年を超える老舗窯元でありながら「伝統」「モダン」「アート」それらすべての視点で作られる製品は一見「伝統工芸」という一言では括れないものがあります。
スタイリッシュで斬新なデザイン、見ているだけで溜息がでてしまう美しい色彩の器の数々。
伝統の技術とこれからの時代に向けた試みの集大成といえます。
金を使った絵付を特徴とし、三代目の吉田美統氏は人間国宝。
今は四代幸央氏が伝統を守りつつ、新たな九谷焼を作り続けています。
錦山窯の九谷製品は一度は手にしたい憧れの逸品ともいえるかもしれません。
以上、少し九谷焼の印象が変わったでしょうか。
決して美術品としてだけでなく、日用に取り入れたい「盛れる」器です。
手に届きやすい価格帯からありますので、ぜひ楽しんでください。
コメント