歌舞伎「雷神不動北山桜」(毛抜き)見どころとあらすじ

1684年初代市川團十郎が演じたことに始まり2代目はこれが当たり役となりました。
それがもとで成田屋にとって特別な演目となり、7世団十郎が「歌舞伎十八番」としました。

歌舞伎十八番の内、「雷神不動北山桜」(なるかみふどうきたやまざくら)のあらすじや見どころについてご紹介します。

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「雷神不動北山桜」(なるかみふどうきたやまざくら)とは

五段になる狂言です。
4時間近くの長編のため、そこから独立させたのが「毛抜」「鳴神(なるかみ)」「不動」の3演目です。

圧倒的に「毛抜」や「鳴神」のほうが上演頻度は高いのですが、その大本となっている雷神不動北山桜。
一人の役者が5役演じる演出も魅力のひとつ。

雷神不動北山桜登場人物

まずは登場人物からご紹介。

早雲王子(はやくものおうじ)
最初と最後にしか登場しないですが、すべての発端となる人物。

鳴神上人(なるかみしょうにん)
高僧。卓越した力を持ち合わせます。

雲の絶間姫(くものたえまのひめ)
陰陽師・安倍清行の愛弟子でもある才色兼備の女性。
この話のキーパーソンとも言えます。

文屋豊秀(ぶんやのとよひで)
毛抜きで小野家の姫と結婚するとなっていますが、なぜか最後絶間姫と婚姻の儀をあげることになります。

雷神不動北山桜あらすじ

時代は平安時代。
早雲皇子(はやくもの おうじ)は現帝の皇太子。
つまりは次の帝になる人です。
しかしながら世が乱れるという予言から天皇の継承権をはく奪されてしまいます。
早雲皇子は怒りに世を恨むようになりました。

世継ぎに恵まれない天皇は鳴神上人(なるかみしょうにん)に祈祷を依頼します。

お堂の建立を条件に鳴神上人は祈祷をすると、天皇はとたんに子を授かりました。
ただしお堂は建てられなかったため、鳴神上人は怒り、竜神を滝壺へ封じ込めてしまいます。

これにより世の中は大干ばつに陥ります。

困った朝廷は雨乞いをするため、雨乞いに必要な短冊をもっている小野家に依頼。
しかしその短冊は何者かに盗まれてしまいます。

短冊を盗んだのは八剣玄蕃(やつるぎ げんば)。

しかしその事情を知らない小野家では、小野家の重宝の短冊を紛失してしまったと大騒動。
短冊を盗んだ八剣玄蕃本人が、小野家の家老の秦民部に責任とれと切腹を迫ります。

八剣玄蕃はそれだけでなく、あの手この手で小野家の姫、錦の前の婚姻を破断にしようと企てます。

実はここからが「毛抜き」の段となります。

毛抜きの詳細はこちらでご確認いただけます。
> 歌舞伎 「毛抜き」見どころとあらすじ

しかしながら姫の婚約者の使者、粂寺弾正(くめでら だんじょう)によりこの玄蕃の悪だくみが暴かれてしまい、短冊も小野家に無事もどることとなりました。

短冊は戻るも、鳴神上人の念は強く雨乞いの成果は見られませんでした。
変わらず干ばつが続くので、ついに朝廷は鳴神上人を攻略する方法を考えます。

ここからが「鳴神」の段になります。

雲の絶間姫(くものたえまひめ)という絶世の美女を鳴神上人に近づかせ、完全に油断させ酒をぐいぐいと飲ませ、結界の解き方を聞き出します。
すっかり酔った上人は寝落ち、そのすきに絶間姫は上人の結界を壊し龍神を解放しました。

とたんに雨が降り出し、世は干ばつ災害から逃れることができました。
雨の音に飛び起きた上人はだまされたことを知り、怒りに震え絶間姫を探すため飛び出します。

鳴神の段はここまでとなります。

さて、追われることとなった絶間姫、この使命を果たす理由は毛抜きの段で短冊事件を解決した粂寺弾正の主人、文屋豊秀(ふんやの とよひで)と結婚したいためでした。

しかしこの文屋豊秀は奇病に悩む小野家錦の前と婚姻の約束をしています。
つまりは絶間姫は妾ということになるのですが、、。

しかし文屋豊秀はどんどんあたりが水浸しになってくるので、絶間姫を心配し探し始めます。
そこへ絶間姫を追ってきた上人が現れますが、槍持の伝内(やりもちの でんない)という奴に殺されてしまいます。

その後、粂寺弾正が豊秀と絶間姫を保護。
なぜか錦の前と結婚するはずだった豊秀と絶間姫が婚礼の儀を行う運びとなりました。

しかしそこへ亡霊となった鳴神上人が現れ大暴れします。
豊秀と絶間姫との婚姻を邪魔しようとしたのは上人の亡霊だけではありません。

最初に帝にはなれないと宣告された早雲皇子(はやくもの おうじ)も実は絶間姫に想いをよせていました。
何としてもこの婚姻をやめさせたいと激怒します。

早雲皇子は家臣の見影八郎(みかげ はちろう)に結婚をやめさせるよう指示します。
しかしそんなところでへ「不動明王」が君臨。

何かと問題を起こす輩を一掃。
平穏な日が戻りました。

この最後が「不動」の段です。

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雷神不動北山桜見どころ

成田屋のお家芸ですが、通しで上演されることが少ないので、もし上演されるときは必見です。

大体
・鳴神上人
・粂寺弾正
・早雲皇子
・阿倍清行(絶間姫の弟子)
・不動明王
の5役を同じ役者が演じます。

悪役・善人を同じ役者が演じるというのも面白い演出。

また、「鳴神」の段の最後鳴神上人が絶間姫を探しに行く場面は六方でさっそうと花道を駆け抜けます。

おススメの席は当然花道が良く見える席です。

8代目團十郎が演じた後、一旦は途絶えた演目ですが明治に入り復活。
単独上演される「毛抜き」も含め、今では人気演目となりました。

磁石のからくりや色仕掛けで結界を解く方法を入手するなど、通しで見ると奇想天外な物語ですが、歌舞伎ならではの見せ場も各所にちりばめられ、観るものを飽きさせません。

機会あればぜひ一度ご観劇ください。

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