「倉敷ガラス」はその名の通り岡山県倉敷で作られているガラスですが、倉敷で作られているガラス全般を指すわけではありません。
日常使いにしたいそのクオリティ高いガラス製品とは、ある職人さんの手で作られ、歴史が作られたものなのです。
ちょっと他の工芸品とは違う価値観がみえる倉敷ガラスとは?
その魅力についてのお話です。
倉敷ガラスとは
倉敷ガラスは「江戸切子」や「琉球ガラス」などとは異なり、倉敷で作られているガラスや特別の細工をされたガラスを指すわけではありません。
今や民藝としても度々メディアで紹介されていますが、実はたった一人の職人さんから作られ、一子相伝で受け継がれたひとつの工房から生まれたガラスを指します。
倉敷ガラスの称号が与えらえるのは小谷栄次さんと息子さんの眞三さんのお二人の手で作られたガラスのみ。
クリスマスツリーに飾るオーナメントのガラス玉から始まった倉敷ガラスはどこまでも真面目で美しく、丈夫で温かみあるガラスです。
倉敷ガラスの歴史
1964年、当時柳宗悦氏らの民藝運動によるちょっとした用途美を追及する運動が盛んでした。
そんな折、倉敷民藝館の館長外村吉之介氏が目をつけたのが、輸出のためのクリスマスツリーを倉敷で作っていた小谷眞三(しんぞう)氏。
いきなりメキシコのグラスを出しこんなグラスを作ってみないかと持ち出したそうです。
なんとか倉敷を民藝で盛り上げたいという意図があったとか。
ただ、そこから小谷眞三氏の試行錯誤が始まります。
普通、吹きガラスで器を作ろうとすると、吹く人と形を成形する人と分業で行います。
ただ小谷氏はこれを一人で行うために道具から見直したと言います。
「スタジオ・グラス」という技法で、一点一点時間との勝負で作り上げていきます。
「健康で、無駄がなく、真面目で、威張らない」
民藝の志です。
あくまで見た目だけでなく使い勝手のよい
暮らしに寄り添う、人に愛される倉敷ガラスはこうして岡山の民藝作りに尽力した民藝館館長とその想いに応えようと真摯にガラス作りに向き合った一人の職人のこだわりから始まりました。
今では眞三さんのご子息栄次(えいじ)氏と二人で倉敷ガラスを作っています。
倉敷ガラスの特徴
薄く軽いガラスとは対照的に民藝の精神を受け継いだ倉敷ガラスは厚手で少し重みがあります。
倉敷ガラスは不思議と温かみのあるガラス。
鋭い光を放つガラスというより、柔和な光といった印象です。
「捻りモール模様」というねじるように器の表面に波打つひねり模様のついた器が多いですね。
伝統となる小谷ブルー
主張しすぎない深みのある倉敷ガラス特有のブルーは小谷ブルーと呼ばれる美しい青。
最初はこの色がなかなか出せず、倉敷民藝館の館長外村吉之介氏に何度もダメ出しをされたと言います。
江戸切子などの鮮やかな青でなく、少しくすんだブルー。
モスグリーン系のガラスを混ぜることにより、深みが増しました。
この美しさに民藝運動メインメンバー英国人の陶芸家バナードリーチや版画家棟方志功らを魅了したと言います。
厚手ながら飲み口は薄く、強度を保てる温かみのある重さと厚さ。
他のガラスとは圧倒的に違うのは「素朴の中にある美しさ」だと個人的には感じています。
ガラスなのでシンプルなのは当然なのですが、その厚みや小谷親子によるこだわりの作り方が確実に他のガラスと質感が異なるように想えます。
手作りだからこそ微妙に形状も異なります。
それも愛嬌。
リーズナブルな価格設定も日常使う器としては嬉しいですね。
厚手で丈夫ですが、食器洗浄機や電子レンジには使えません。
耐熱ではないので、熱湯など高温のものは不向きです。
最低限のガラスの取り扱いは守って使うようにしてください。
倉敷ガラスはここで買える
職人2人で作られているガラスは当然、大量生産のガラスメーカーとは異なり出荷量は少ないで、どこでも取り扱いがあるわけではありません。
通販ならこちらがおススメ。
倉敷ガラスの良さを伝えたいという思いが伝わります。
美観堂
まさに「岡山・倉敷のほんとうにいいものを」をコンセプトに展開している店舗。
様々な倉敷発信の製品を販売されています。
倉敷ガラスの点数がちょっと少ないのが残念ですが、ランナップは人気アイテムばかり。
もし欲しいアイテムがあれば、相談可能かもしれません。
メンテナンスも相談にのってくださるそうです。
REAL JPAN PROJECT
日本の「いいもの」を取り揃えて販売しているリアルジャパンプロジェクト。
倉敷ガラスの特徴を紹介しながら製品を紹介。
小谷ブルーと称されるブルー系の器も取り扱われています。
紹介したとおり、倉敷ガラスは一点一点手作りです。
形には個体差があります。
また、底のガラスの切断跡やフチのゆがみなど。
それも倉敷ガラスの表情のひとつとして楽しんでください。
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