華やかな色と模様がなんとも可愛らしく艶やかな「琉球紅型(びんがた)」。
他のどの産地のものとも異なる南国風情たっぷりの染物です。
民藝運動でお馴染みの芹沢銈介も、この紅型との出会いにより型染中心の染色を始めたと言われています。
そんな紅型の魅力と歴史、さらにおススメコーデまでご紹介します。
紅型とは
江戸紅型などありますが、一般的に「紅型」というと「琉球紅型」を指します。
その名の通り、沖縄の伝統工芸です。
びんは「色」、がたは「模様」を意味します。
「紅型」と書きますが、沖縄本土では「びんがた」とひらがなで表記されることが多いようです。
色鮮やかな紅型ですが、一枚の型紙から染められます。
(ただ、フリーハンドで染める「筒描き(糊引)」という技法もあります。)
赤、黄、青、緑、紫を基本色とし、古典的な花鳥風月からモダンなモチーフまで幅広いデザインとなっています。桜、梅、柳、蝶など友禅染めとも共通点が多くみられます。
色は元々は着る人の身分によって分けられていました。
南国ならでは鮮やかな色と大胆な配色が特徴です。
中国や東南アジアの影響とも言われています。
ちなみに藍一色で染めたものを藍型(あいがた・えーがた)といいます。
顔料と天然染料の両方を用いて染められており、下塗りと上塗りで使い分けするのも紅型の大きな特徴と言えます。
紅型の最大の特徴はこの配色と彩度の強さ。
これは日本全国の染めで群を抜いた華やかさです。
南国の強い光に負けない染色を目指したことから生まれたという紅型の色。
一度見ると目が釘付けになる美しさです。
紅型には琉球紅型のほか、京紅型、江戸紅型などありますが、どちらも琉球紅型ほどの強い発色ではなく、染工程も異なります。
紅型の歴史
沖縄の紅型は14~15世紀ごろに始まったと言われています。
琉球王国だった時代、海外の交易が盛んだったため、インド更紗やジャワ更紗なども入ってきました。その影響が強く、さらに中国からの染色の型紙が入ってきたことにより紅型は始まったそうです。
当時は王族や士族の衣装として染められていました。
当時は身分によって色・模様が分けられ、黄色の地色のものは高貴な色とされ、身分の高い貴族の衣服などに使われていました。
東洋の優れた染物として、海外や江戸幕府の献上品としても重宝された琉球紅型ですが、第二次世界大戦で型紙がほとんど焼失。しかしながらその技術は継承され、見事に復興を果たします。
沖縄県は38もの織物が国の伝統工芸品に指定されているほど、織物の盛んな地域です。
その中、唯一染色で伝統工芸品に指定されているのがこの琉球紅型。
現在、沖縄県の無形文化財でもあります。
紅型染め方の工程
あの美しい染物はどういった工程でできるのか見て行きます。
1.型彫り(カタフイ)
紅型の型紙には「白地型」と「染地型」というものがあります。
白地型は、模様部分を残して型紙の地の部分を切り落とした型紙で、染地型はその反対です。
シークという小刀を使って豆腐を乾燥させた「ルクジュー」を下敷きにして掘っていきます。
2. 型付け(カタチキ)
型付けとは型紙を布地に置き、染めない部分をへらで糊づけする工程。
防染糊は天候や湿度の影響を受けやすいため、調合も難しいため染の出来に大きく左右する作業と言われています。
筒描きという技法の場合は筒に糊を入れ、少しずつしぼり出しながら、防染する部分に糊を置いていきます。
一般的には着物や帯には型染、風呂敷などには筒描きで染めることが多いようです。
3.色差し(イルジヤシ)
色を差すことを「イルクベー(色配り)」と言うそうです。
顔料と天然染料を用いて、赤系の暖色系から染めていきます。
顔料は生地に浸透しにくいので、奥まで刷り込むため二度刷りを行います。
4.隈取り(クマドウイ)
染色した部分に「隈取り」という技法を使って、ぼかしを入れていく作業です。
これは琉球紅型特有の技法と言われています。
色差しの色によって隈取りする色は決まっています。
この隈取りを行うことにより模様に立体感がでます。
5.糊伏せ
防染糊を模様の上に塗り、地染の防染を行う作業です。
「ビンウシー(紅押さえ)」と呼ばれています。
模様の防染効果だけでなく、生地の白場や文様の白場を出す意味もあります。
6.地染め
紅型は顔料、染料による刷毛引きの手法で、藍染めの場合藍壺に浸けて地を染めます。
地色には黄色地、葡萄地、緋色地、金黄、紺地、水色地などありますが、黄色は王朝時代、一番位の高い色とされていたそうです。
7.水洗い
一通り染色したら、糊や余計な染料を落とすため水洗いします。
ものによってはこのあとまた型附けや糊伏せの工程を行うことも。
紅型は染め上がりまで、ものによっては数カ月かかるそうです。
琉球紅型おススメコーディネート
琉球紅型は多色で鮮やかなので、紅型の着物にはシンプルな帯を合わせます。
紅型の文様には草花が多いので、帯には花文様などは避けます。
琉球紅型は小紋に入ります。
おしゃれ着としてちょっとしたお出かけに着て行きたいですね。
琉球紅型の名古屋帯も人気があります。
こちらは反対に紬や江戸小紋などシンプルな着物に良く映えます。
格はカジュアルに属するので、紅型の帯は色無地などには合わせません。
存在感たっぷりの琉球紅型ですのでコーディネートは足し算引き算を考え、全身お花畑にならないようコーディネートしてください。
琉球紅型は伝統工芸品です。
本物には「沖縄県紅型検査済之証」や「経済産業大臣指定伝統的工芸品」マークがついているので、しっかりチェックしてください。
少々値段ははりますが、特に帯などは持っていると品よくアクセントになり、着姿がグッとあがります。
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