今、海外からの観光客の間でも大人気の織物をご存じですか?
北九州市で作られている「小倉織」(こくらおり)。
歴史は古いのですが、そのデザインはモダンでスタイリッシュ。
家康はじめ、武士が愛用した理由とは?
今国内外で大人気の小倉織のご紹介です。
小倉織とは
福岡県北九州市で作られています。
厚手で丈夫ながら美しい縞と滑らかな手触り。綿素材のため用途幅も広いため、今や様々なアイテムが作られています。
経糸(たていと)の密度が緯糸(よこいと)の3倍の密度のため、織り目が分らないほど詰まっています。
そのため厚手で丈夫。
その丈夫さを活かしその生地は江戸時代は武士、幕末では子供の袴、さらに明治では制服に使用されていました。
隠居後の徳川家康が鷹狩りに出かけた際に小倉織の羽織を着用していたとか、「小笠原騒動」の中で、中老・澁田見主膳が刺客に襲われた際、槍で腰を刺されたものの、槍の穂先が小倉織の袴の裾をすべったため、かすり傷もなかったなど、小倉織にまつわる様々な逸話が残っています。
また、結び目がゆるみにくく、変色しにくいことから武士の帯にも使用されていました。
それらの話も納得。小倉織は綿でありながら独特のハリ感があり、表面は絹のような光沢があります。
先に述べた通り折り目が分らないほど細かく目が詰まっているので槍の先が滑ったというのも、嘘ではなさそうです。
小倉織の特徴
ハリのある厚手の綿で、細かい縞が特徴です。
見た目以上に一つの縞の中には幾重もの色が入っています。
それがキリっとした美しい縞を作り出します。
絹のような美しい光沢の綿布。
「武士の袴は小倉に限る」と言われるほど美しく丈夫な布として定評ありました。
縞は時代とともに少しずつ進化しました。
江戸時代は無地もあったと言われてます。
使われている色は藍色・茶色・灰色・白がメインでした。
明治以降は糸が手紡ぎ糸から機械紡績糸へと変わり、徐々に化学染料による色が作られるようになってきます。
このころから現在のグラデーションの美しい縞に織られるようになりました。
小倉織の最大の特徴の美しい縞。
そのヒミツは織り方にあったんですね。
織り目の詰まった小倉織は少しの水くらいなら通さないほどです。
ほどよいハリ感も素敵です。
歴史
小倉織の始まりは江戸時代。
福岡県、豊前小倉藩(現在の北九州市)で作られ始めました。
綿が日本全国に広まり始めたころです。
1800年代半ばには九州だけでなく江戸まで日本全国に販路を拡大。
織機を持つ家が3000戸以上あったことから、その生産量がいかに多かったか分かります。
しかしながらやがて、小倉藩は産業政策のため小倉織を専売制に。
これは生産量や流通、さらには売上利益まですべてが藩の管理下になるということ。
ここで生産者は激減。幕末の戦争がさらに小倉織の衰退を加速させました。
それでも定評ある小倉織は武士の袴からやがて明治になると男子学生の制服などにも使用され、300年以上のれきしある伝統工芸として引き継がれていきました。
しかしながら昭和にはいり、生産者がさらに少なくなると昭和初期、その歴史が途絶えます。
1984年、染織家の築城則子氏により小倉織は奇跡の復活を果たします。
一切れの古い布切れの美しさに魅せられた築城氏はそれが小倉織を知り、その復興に尽力します。
1984年は築城氏が理想とする小倉織を完成させた年。着手から完成までは長い試行錯誤の年月を要したそうです。
築城則子氏の作品の一部は東京国立近代美術館やロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館に収蔵されています。
その後小倉織ブランドが立ち上がり、現在もその美しい縞が現在の生活にも取り入れやすいことから様々なアイテムが作られています。
一旦生産が途絶えた小倉織は国の伝統工芸には入っていませんが、福岡県知事指定特産工芸品に指定されています。
制作工程
現在の小倉織の制作工程は「手織り」と「機械織」両方で制作されています。
手織りは工芸品として、機械織は主にインテリアやファブリックアイテム向けとなっています。
この製造法により、小倉織による製品の幅は拡大に広がりました。
さらに糸の生成も種を取り除く「綿繰り」、繊維をほぐすための「綿打ち」、ある程度の量の綿を筒状に巻く「綿筒(じんき)作り」といった工程に分かれます。
そういった工程を経て糸を紡いでいきます。
機械で一気に糸の生成する方法も行われています。
糸ができてから作りあがる縞の色に染色。
小倉織は化学染料で染める場合と草木染でも一部染められています。
染色した糸を織っていきますが、織り方はたてとよこの糸を1本ごとに交差させて織る平織。
ただ小倉織は経糸が緯糸の3倍の密度で織っていくので一筋縄ではいきません。
糸同士がくっつき合って機織りの上下が開きにくかったり、よこ糸を強く打ち込まなくてならなかったりかなりの技術が必要となってきます。
小倉織おススメアイテム
風呂敷
モダンで色鮮やかな小倉織は風呂敷が大人気。
風呂敷ならテーブルウェアや簡単なエコバッグなど、幅広く使用できます。
近年は撥水加工された小倉織の風呂敷も販売されています。
撥水加工の風呂敷は災害グッズやテーブルクロスなど様々なシーンで重宝します。
バッグ・ポーチ
縞のデザインと色彩が美しい小倉織はバッグやポーチなどのアイテムの相性がバツグン!
可愛らしいものが多く販売されています。
デザインも幅広いのも嬉しいですね。
手持ちバッグは着物にも合わせやすいですね。
インテリア
機械織が発展したことにより幅広の反物が織れるようになりました。
それによりソファやカーテンなどインテリアテキスタイルも製造されるように。
最近話題になったのは「KUMASHIMA」というブランド。
建築家の隈研吾氏とのタイアップで生まれた小倉織ブランドです。
モダンでスタイリッシュな色と縞模様が部屋をグッとおしゃれにしてくれます。
以上、伝統工芸と聞くとなんとなく地味なイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが小倉織は現在に通じるスタイリッシュなデザイン。
小さな古い破布がある染色家の心を奪い、見事な復興を果たしました。
ぜひお気に入りアイテム見つけてください。
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