日本三大紬とも言われる「牛首紬」。
そのまま「うしくびつむぎ」と読みます。
ちょっと変わったこの名前。
他の紬とは明かに異なる特徴が。
牛首紬の特徴と魅力についてご紹介します。
牛首紬とは
石川県の旧牛首村、現在の白峰地区で、「特定」の工程で織られている紬です。
鹿児島の大島紬、茨城の結城紬に並ぶ日本三大紬と呼ばれる牛首紬は他紬ともちょっと一味違う紬です。
その特徴は後ほど記載しますが、まず紬としては後染めもあり、絵羽など色彩・種類も幅広いこと。
その産地は白峰地に限定され、その工程も伝統工芸としてすべて指定されています。
歴史
牛首紬の歴史は平安時代までさかのぼります。
1159年におきた源氏と平家の戦い、平治の乱。
そこで破れた源氏の落人、大畠某が牛首の地に流れ東方「尾の上」に城を構えていました。
その妻が機織りの技術をその集落に伝えたのが始まりとされています。
元々牛首は養蚕が盛んな地域だったことから、その織物は独自の発展していきます。
牛首紬として確立されたのは江戸時代とも言われ、農村における家内工業から大きく発展した時代でもありました。白峰地方は江戸時代、幕府直轄の天領となったこともあり、保護奨励策により日本全国に広まることとなります。さらに明治時代末期には生産販売体制が本格的に確立。
大正から昭和にかけては機織り織機台数80~100台が稼働していたと言います。
戦争を機に販路が現象。牛首紬は一度は衰退の危機となりましたが、1963年養蚕を開始され翌年には紬工場が建設されます。やがて再興を果たします。
1988年、国(経済産業大臣指定)の伝統的工芸品に指定されました。
ただ現在、牛首紬が作られている織元は2件のみ。
当然生産数も限りがあり、とても貴重なものとなっています。
牛首紬の特徴
石川県白山市で生産されている紬織物が、すべて牛首紬というわけではありません。
同じ地区で織られる紬で白山紬があります。
牛首紬と定義づけるには様々な条件があります。
玉繭からつくること
2匹の蚕(かいこ)が作った繭を玉繭(たままゆ)と言います。
普通の繭の2倍くらいの大きさあります。その玉繭から糸を紡ぎ出すことは難しいため、ほとんどは「くず繭」と言われ、使われないそうです。
牛首紬はここから独自の技術で素手で挽きだしていきます。
繭を煮た状態で熱湯のなかに手を入れるので至難の業と言えます。
横糸に玉糸を使用
経糸は生糸、緯糸には「座繰り(ざぐり)」による玉糸を使用します。
玉糸とは玉繭からとった糸のこと。
座繰りとは、座って繭から糸をたぐりながら糸枠に巻き取ることです。
女性の職人さんが多く、片手で糸巻車を操り、熱いお湯に手を入れて繭から糸を引き出していきます。
よこ糸の打ち込みには手投杼ひまたは引杼を用いることも定義づけされています。
「杼(ひ)」とは織物を織るときに経糸に横糸を通すときに使う道具のことです。
そのほか、牛首紬の定義は「先練り又は先染めの平織りとすること」などがあります。
先練りとは織物にする前の生糸の状態で、不純物などを取り除く精錬の作業を言います。
魅力
牛首紬は別名「釘抜き紬」といいます。
これは、打ち込まれている釘に牛首紬の糸を引っ掛けると糸が切れずに釘が抜けてしまうほど丈夫ということからきています。
そんな丈夫な糸から作られる牛首紬は紬としては珍しく後染めもされます。
デザインのバリエーションも広く、なにより弾力性や伸縮性があり、シワにもなりにくいのが魅力。
紬っていうとちょっとごわつくイメージを持つ方もいらっしゃるかもですが、牛首紬の反物はしなやかで軽やか。糸の生成に特徴のある牛首紬は、弾力性と伸縮性にも富んでいます。
近年は同じ石川県の加賀友禅の染色を施した訪問着や袋帯などの展開も。
紬というと値段が高いもののカジュアルシーンしか着られないということでなかなか手を出しにくい面がありますが、どんどん新しい展開されているのが牛首紬。
丈夫でしなやかな生地なので、近年パリコレの衣装でも採用されたそうです。
牛首紬の選び方
繰り返しになりますが、白山地区で生産されている紬がすべて牛首紬ではありません。
「白山工房」と「加藤機業場」でしか今は作られていないので、織元をしっかりチェックしてください。
規定の落款やラベル表示があります。
先染めと後染めがあります。
好みに分かれるところですが、紬は訪問着より小紋などで思い切りおしゃれ着として着たほうが断然幅広く楽しめます。
また、機械織は白山紬で生地も薄め。牛首紬は一部を除いて手織りで、玉糸を使っているため厚手でしっとりとした手触りになっています。
こんな人におススメ
牛首紬は着物好きの通が好む紬とも言われています。
紬を一枚欲しいという場合に牛首をおススメする方も多いようです。
後染の訪問着などもありますが、そこは紬なので格式の高い場所や目上の方などの結婚式などの着用は、よく検討してください。カジュアルな友人の結婚式やパーティなどは反対に格式ばらずに、控えめな華やかさがあるのでいいかもしれませんね。
- 紬好きな方
- 希少価値のある着物が欲しい方
- 着物をカジュアルにおしゃれ着として楽しむ方
- シンプルな着物が好きな方
工芸の盛んな石川県で、今も少数の職人が昔ながらの技術を継承しながら現代の生活に寄り添う反物を作り出しています。
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