文楽(人形浄瑠璃)は、歌舞伎より長い歴史をもつ伝統芸能です。
人形浄瑠璃から歌舞伎が派生しているので、演目も同じものが多いのが特徴。
そう聞くと敷居がグッと上がるかもしれませんが、歌舞伎よりも気軽にお安く楽しめる文楽。
難しいかもと思う方のために初心者におススメの演目と楽しめる方法をご紹介します。
文楽を観に行こう
文楽ってどんな感じの芝居なの?という方にカンタンにご説明しておきますね。
人形浄瑠璃とも呼ばれますが、最近は「文楽」という呼び名が定着しています。
三味線に合わせ、「太夫(たゆう)」が状況説明・登場人物の台詞すべて語ります。
人形は一体三人で操ります。
太夫の語りはすべて劇場横のスクリーンに字幕で表示されます。
人形は驚くほど生生しく動き、表情も豊かで一気に惹き込まれます。
詳しくはこちらもご参考ください。
文楽初心者におススメの演目
どうしても文楽の演目には分りやすいものと少々難しく感じるものがあります。
今回、初心者の方でも比較的わかりやすく楽しめる演目をご紹介。
通年上演頻度も高いので行きたいと思ったらぜひ劇場に足を運んでみてください。
曽根崎心中
歌舞伎より文楽の演目として知られる曽根崎心中。
大阪でおこった実際の心中事件をもとに描かれていて、江戸時代はこの芝居がヒットしたことから心中するカップルも後を立たなかったと言われるほどです。
三谷幸喜氏もパロディで脚本を書いています。
【みどころ】
醤油屋の使用人の徳兵衛は遊女のお初という恋人がいます。
しかしながら住み込みで働いている叔父の家で、世帯を持てる立場にありません。
挙句の果て店主は姪とこの徳兵衛を結婚させようと考えます。
徳兵衛はなんとかお初を見受けしようとお金を調達。
しかしこのお金を取られてしまいます。
なかなかうまくいかない二人は、先日おこった心中事件を思い出します。
ついには二人は心中を決意しますが。。。
妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)
歌舞伎でも人気の演目です。
人形浄瑠璃黄金期名作者と評される、近松半二とほか書き手による合作です。
「大化の改新」を題材にした演目で第一段は「芝六忠義の段」がみどころ。第二段は「「妹山背山(いもやませやま)の段」が描かれています。
【みどころ】
時代は大化の改新の少し前。
蘇我入鹿の野望を阻止しようとする人々の物語。
歴史もの?と思いきやロマンあふれるファンタジー要素たっぷり。
蘇我入鹿に近づこうとし、藤原鎌足の家臣が「鮒七」と名乗って荒々しい素行をみせます。
驚くほど頭がよく、入鹿にもうまく取り繕います。
後半はやはり入鹿討伐のために身分を隠して庶民に扮している藤原鎌足の息子、元女に恋焦がれるお三輪がキーとなります。
実はこのお三輪の血が入鹿討伐に必要だった?
複雑な人間模様が観るものすべてを魅了させます。
義経千本桜
歌舞伎同じく三大名作と呼ばれる演目のひとつです。
歌舞伎では早変わりなど演出も見どころとなっています。
上演される段によって主役が変わりますが、それぞれの見どころは愛のあふれたお話となっています。
【みどころ】
源平の戦いの後日を描いた演目。
少し残酷な悲劇でもあり、人情にあふれた心温まる話でもあります。
義経にまつわる人々の物語。
平知盛・いがみの権太・忠信と段により主人公が変わる、面白い構成。
通し狂言でなくても見どころたっぷりの演目です。
詳しいあらすじはこちらを御覧ください。
> 歌舞伎 「義経千本桜」見どころとあらすじ
菅原伝授手習鑑
こちらも三大名作のひとつ。
歌舞伎でも大人気の演目で一年間で度々上演されます。
学問の神様と祀られる菅原道真、菅丞相(かんしょうじょう)と梅王丸・松王丸・桜丸の三つ子のお話。
【みどころ】
寺子屋と車引きがメインで大体その段が上演されます。
三つ子の個性がそれぞれ見せ場を作ります。
こちらも各段で見どころがたっぷりあるの通しでなくても楽しめます。
歌舞伎では菅丞相の木像に魂がはいり、動き出すという場面で役者がそれらしい動きを見せるのも見どころなのですが、残念ながら元々人形の文楽はその見どころはないですね・・・
詳しいあらすじはこちらをご参照ください。
> 歌舞伎 「菅原伝授手習鑑」見どころと楽しみ方
仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
誰もがその物語を知っているお馴染み1700年におきた赤穂浪士討ち入りの話。
元々人形浄瑠璃から始まり、江戸時代爆発的な人気の演目となりました。
三大名作の中でも特に人気の演目です。
実話に基づいた物語は当時かなりスキャンダラスに感じたことでしょう。
その人気は現在でも続き、一度上演されるとたちまち大入りとなるほどです。
【みどころ】
全十一段の演目ですが討ち入りの段は最後の十一段になります。
この忠臣蔵。
討ち入りのきっかけになった刃傷事件から討ち入りまでの経年で繰り広げれられる人間模様など見どころはたっぷり。
年末の上演が多いので、一度観たい方は時期になったらぜひチェックしてみてください。
詳しい忠臣蔵のあらすじはこちら
> 歌舞伎 仮名手本忠臣蔵の見どころ
女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)
近松門左衛門が人形浄瑠璃のために書き下ろしたと言われています。
忠臣蔵同様実際の事件を題材にしています。
【みどころ】
油地獄とは殺されそうになり油まみれになりながら逃げ惑うさまからきたタイトル。
悪さを繰り返す与兵衛。金を貸してくれたお吉に、さらに金を要求。
断れるとお吉を殺害しようと追いかけまわします。
欲求から悪事に手を染める与兵衛をとりまく人間模様が複雑に絡み合います。
これらが初心者に特におススメの演目です。
演目をもっと楽しみたいなら
義太夫の語りは、人物のセリフとなる「詞(ことば)」、情景を描写する「地合(じあい)」を三味線とともに歌うような「節(ふし)」をつけて語ります。
なかなか難しく聞き取るのが難しいのですが、舞台横に字幕がでるので安心。
また、あらすじをあらかじめ読んでおくのも手です。
一番おススメはイヤホンガイド。
舞台の進行に合わせ、状況や登場人物の心情などカンタンに説明してくれます。
ただ、文楽は人形の動きと三味線・義太夫の語りを楽しむもの。
ストーリーよりその三位一体の心地よい流れを楽しんでください。
いつの間にか人形の表情が豊かに見えてくるのに驚きます。
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