駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)と聞いて、どんなものなのかピンとこない方いらっしゃるかもしれませんが、アイテムを見れば
「あっ!これ見たことある」
と思うはず。
竹だけでこんな美しいアイテムができるの?
と驚きのクオリティ。日本の誇るべき、見る人すべてを魅了する技術です。
そんな駿河竹千筋細工とは。
駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)とは
こんなアイテム一度は見たことありませんか?
これらが駿河竹千筋細工。
竹ひご作りからすべて職人の手でつくられている静岡の伝統工芸です。
丸ひごで一本一本ひごを組む駿河竹千筋細工はその表現の豊さに美しさがあります。
歴史
実は歴史の始まりは徳川家康とも言われています。
将軍の座を降りた家康は駿河に移り住みます。その時に鷹狩りのために必要な餌箱を鷹匠たちに竹で作らせたのが始まり。
今も駿河竹千筋細工の虫籠は、ひとつの工芸品としてインテリアアイテムとして親しまれています。
また、江戸時代籠枕が参勤交代の大名の間で大人気となったという話も残っています。
現在のような精巧な作りになったのは江戸後期のこと。
岡崎藩士である菅沼一我が静岡に立ち寄り、丸ひご作りの技術を伝え、今の駿河竹千筋細工が出来上がりました。
「孝行をするが第一、竹細工」という言葉が生まれたほど、竹細工は駿河の誇りの工芸となりました。
近年の話でいえば、1873年ウィーンの国際大博覧会で出品された駿河竹千筋細工は、日本の工芸品として世界中から注目されたと言います。
その技術は確実に後世に伝わることとなり1976年、駿河竹千筋細工は国の伝統工芸に指定されました。
特徴
駿河竹千筋細工の最大の特徴ななんといっても竹ひごの曲線美。
他産地の竹細工は平ひごを編むことにより、模様を生成していきます。
一方、駿河竹千筋細工は1本1本ひごを組み、曲線を作っていきます。
面を作るというより、線で見せるといった表現のほうが合っているかもしれません。
千筋とはこのひごことを指しています。
また、輪の部分をつなぐ「継手」という技法はこの駿河竹千筋細工でしか用いない技法。
この技法によりつなぎ目が一見分らなくなります。
細部にまでこだわりぬいた技法で、あの美しいフォルムが出来ているんですね。
竹のしなる美しい曲線を十二分に活かした駿河竹千筋細工は海外の人にも人気で、天皇とともに静岡を訪れたスペイン国王夫妻にも駿河竹千筋細工が献上されたそうです。
駿河竹千筋細工はココがすごい
駿河竹千筋細工はもう素人目でもその高い技術が要求されるのが分りますよね。
竹から均等の太さのひごを作り、作るものによってさらに細くしたり折れないよう曲げたりして加工していきます。
竹を取る以外、材料を加工していくことから一人の職人の手で行われます。
製造工程
竹を取ることは職人は行いません。
駿河竹千筋細工3年目のま竹、孟宗竹が使われます。
切られた竹を苛性ソーダを入れた熱湯で煮沸し、油を取り除きます。
20日~30日ほど天日乾燥させたあと、各職人のいる工房へと運ばれます。
ここからが職人の仕事。
竹はまだその形状を残したまま、油抜きされただけの状態です。
1. 竹を均等の長さで切っていきます。
さらに皮を削り、1cmくらいの幅に割っていきます。
使われるのは皮に近い部分のみです。この部位が一番強度が高いと言われています。
2. 小刀を使い、先は細くなるようけずっていきます。
3. ここから駿河竹千筋細工の特徴といえる丸ひごつくり。
鉄板の穴に2のひごを通し、竹を丸く削っていきます。
4. ここまでが土台作り。3のひごを20~30本まとめて熱にあてながら慎重に曲げていきます。
まとめてやるのは曲がり具合を揃えるためだそうです。
5.ひごを通す土台の竹をアイテムにより円や角に竹を曲げながら作ります。
継ぎ目は曲げた後に斜めに切り、接着。
これが駿河竹千筋細工ならではの技法「継手」と呼ばれるもの。
継ぎ目が分らなく、どこまでも竹のなめらかさが際立ち、美しい仕上がりになります。
6.5の土台にひごを通す穴をあけていきます。
ひごの曲線をどうするかによって穴をあける角度を調整します。
7.ひごを1本1本穴に通し、組み立てていきます。
ひごの曲線や重なりを調整し、どのように曲線を作っていけば美しくなるか、
細部までこだわりぬいて作られていきます。
駿河竹千筋細工の代表的なアイテム
虫カゴなんて使わないし、と思うかもしれませんが駿河竹千筋細工は生活に沿ったアイテムが数多く作られています。
以下はその一部です。
花器
和室にか合いそうにないと思いきや、意外とモダンなデザインが多く、これならインテリアとしても楽しめそうです。
菓子器・カゴ
使い方は自由。
蓋つきは少々値段がはりますが、この優美さ。圧巻ですね。
普通の菓子器タイプなら意外とリーズナブルです。
照明
渋すぎず、華美すぎないシンプルながら部屋のアクセントとなるようなデザインが多いですね。
駿河竹千筋細工ならではの線のきれいなラインが灯りをつけるとシルエットのように浮き出します。
竹細工のインテリアアイテムと聞くと、ちょっと部屋になじまないのでは?と思いますが、実物を見ると驚くほどシンプルでスタイリッシュ。
さりげないアクセントとなりそうです。
そしてなによりその細工の精巧さにみているだけでうっとりします。
静岡県では今、その技に魅了された若者が次世代の担い手として、率先しその技術を学ぶ人が増えていると言います。
ぜひ一度実物をご覧ください。
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