まるで万華鏡のようなガラス細工「江戸切子」。
日本代表の伝統工芸でもあります。
「普通のグラスと何が違うの?」
「プレゼントしたいだけど、選び方がわからない。」
などなど。
その魅力と選び方についてご紹介。
お酒好きならなおさら欲しくなりますよ。
江戸切子とは
「切り子」とはカットグラスの和名。
ガラスに文様をカッティングし装飾する技法を言います。
江戸切子とは江戸で始まった工芸で、回転するダイアモンドホイールでガラスの側面に切りこみを入れていく、まさに一発勝負の職人技から生まれる工芸品です。
透明のガラスの上に色のついたガラス(色被せ(いろきせ))に切り込みを入れることで光の反射が複雑になり、まるで万華鏡のような美しさがでます。
江戸時代は透明(スキ)のものに切り込みを入れたものが主流でした。
薩摩切子とよく比較されますが、藩への献上品だった薩摩切子に対し江戸切子は庶民のために作られ、育まれた工芸品です。
また、江戸切子は江戸切子協同組合に商標登録されているもので、製造している会社は現在50あまりです。
1985年(昭和60年)に東京都伝統工芸品に、2002年(平成14年)に経済産業大臣指定伝統的工芸品に認定されました。
江戸切子の歴史
江戸切子の歴史は1834年(天保5年)、江戸大伝馬町(旧日本橋区に当たる日本橋地域内)のビードロ屋の加賀屋久兵衛が金剛砂を用いてガラスの表面に彫刻したのが始まりとされています。
その後明治に入ってから指導者として英国人エマニエル・ホープトマン氏を招き、江戸切子の職人の卵にカットグラスの技法を教えます。その後大正時代に入るとガラスの素材研究やクリスタルガラスの研磨の技法の発展が進み、江戸切子の技術は日本独自の感性でますます磨きあげられていきました。
江戸切子の最盛期は昭和15年ごろとされています。
その後少しずつ職人の数は減ってきてきましたが、今でも東京に50を超える切子工場は江東区と墨田区に全体の八割が集中し、職人が腕をふるっています。
江戸切子の出来上がるまで
大きく分けると5工程になります。
1.墨付け(割り出し)
簡単にいうとカットの目安となる位置付とする印をつけていきます。
2.粗摺り(あらずり)
高速回転したダイアモンドホイールで模様をつけていきます。
3.三掛け
さらに細かい模様を入れていきます。
4.石掛け
天然産の丸砥石を使い、さらに細かい模様を入れていきます。
5.研磨
フェルトや綿など繊維の回転盤で磨き粉をつけて、図柄を丁寧に磨き上げる。
研磨剤は酸化セリウムを使用し、この磨きによって江戸切子特有のきらめきが生まれます。
回転盤は模様の細かさなどによって使い分けます。
江戸切子の模様
江戸切子のデザインは複雑そうにみえて、意外と定番模様の組み合わせになっていることが多いです。
左:矢来文様(やらい-もんよう)
江戸切子の基本的な文様。
矢来とは江戸時代の民家でみられた竹を交差して作られた囲いのことです。
中:魚子文様(ななこ-もんよう)
魚のうろこのような文様。
この模様から「ななこ」のごろ合わせで「7月5日(ななこ)は江戸切子の日」とされています。
右:菊籠目文様(きくかごめ-もんよう)
菊つなぎという文様と立体的な籠目文様を組み合わせた文様。
細かい作業になり、高度な技術が必要です。
そのほか、
「七宝文」「麻の葉文」「菊継ぎ文」「亀甲文」「六角籠目文」などの決まった模様のほか、
職人さんが電動やすりのようなもので絵を浮き上がらせるものなどがあります。
この切りこみの深さや複雑さによって光の屈折が起こり、輝きが増します。
最初の工程である程度の目印はつけますが、下書きなしの一発勝負でカットを入れていきます。
江戸切子の職人さんはつくずくカット技法が高いだけでなくデザイン力も卓越していると思います。
江戸切子の選び方
いざとなると何かと迷う江戸切子。
ネットなどで販売されているものの中には本物の江戸切子でない可能性もあります。
選び方のポイントのご紹介です。
種類を知っておく
江戸切子のグラスは大きく分けて2種類。
「ソーダガラス」か「クリスタルガラス」があります。
ソーダガラスは江戸時代からの素材。割合丈夫ですが、江戸切子の特徴でもある透明度はクリスタルに比べるとおとります。
クリスタルガラスは透明度が高く、光の屈折も美しくでます。
氷がグラスにあたる「カラ~ン」という心地よい音が響くのもクリスタルガラス。
クリスタルガラスの方が高価なので、普段使いなら丈夫なソーダガラス、贈り物や特別な時用であればクリスタルガラスという選び方でもいいかもしれません。
製造元を確認する
江戸切子には「江戸切子もどき」があります。
機械で作成されたカットグラスなどです。
江戸切子とは「江戸切子協同組合の登録商標」であることと以下のように定義されています。
2. 手作業
3. 主に回転道具を使用する
4. 指定された区域で生産されている
そのため、購入の際はちゃんと本物の江戸切子かどうかは見極めてくださいね。
国指定の伝統工芸指定のロゴマークが商品付属のパッケージやグラスなら底にシールが貼ってあったりします。
なければ販売元に確認してください。
値段の違いを知る
江戸切子の値段はけっこう幅があります。
それは色やカットの複雑さ、職人によるもので、前に説明しました「ソーダガラス」か「クリスタルガラス」かで違ってきます。
一般的に淡い色のほうが出すことが難しく、値段も上がると言う話を聞いたことがあります。
また、細かい菊つなぎ紋、籠目紋などは江戸切子のカット技術でも特に高度な技術が必要とされているそうで、当然それらのデザインのものは高い傾向になります。
どこで購入するか
機械でカットされたグラスを「切り子グラス」として販売されている場合があります。
これは決して間違いでなく、切り子とはカットのこと。
ただし、江戸切子の称号を持てるのは職人による手仕事により作られたものです。
専門のショップや百貨店などで実物を見て選ぶことをおススメします。
もしタイミングが合えばよく百貨店などで開催される伝統工芸展です。
もし製造元が出展してたら、ぜひ作り手の方から直接話を聞いて選んだらいいと思います。
きっとひとつひとつのこだわりどころや手入れ法など詳しく教えてくれるはずです。
江戸切子のお手入れ法
江戸切子はカットも複雑で、普通のグラスより手入れが面倒なのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
基本、食器洗い機は避けた方がよさそうです。
理由は急激な温度差に弱いため。ガラスが変色したりする恐れもあります。
同じ理由から熱湯に入れたり、冷蔵庫に入れたりしないでください。
洗う際は手洗いで普通のグラスを洗うように中性洗剤とやわらかいスポンジで洗ってください。
くすみを感じたら台所用漂白剤を薄めて数分間浸してください。
以上、贈りものとしても家飲みのとっておきのアイテムとしても重宝する江戸切子。
その万華鏡のようなグラスは飾っておきたくもなりますが、江戸切子特有の重厚感は普段使ってこそ味わえます。
ぜひ自分のお気に入りのイッピンを見つけてください。
きっと自分時間の楽しみが増えますよ。
コメント
TOPの画像は江戸切子でしょうか?
グラデーションが綺麗なので薩摩切子のようにも見えますが。
老婆心ながらコメントさせて頂きました。
コメントありがとうございます。
ご指摘されれば確かに色合いからみても薩摩切子に近いような気もしますね。
恥ずかしながら筆者の所有する切子はメイン画像にするほどのアイテムではないため、
フリー素材から借用しました。
そこには江戸切子と記載があったのですが、別の画像を探して差し替えようと思います。
ぜひまた当ブログに遊びにいらしてください。
この度はありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。