房州うちわとは?魅力と歴史

よくある日本三大〇〇。

実はうちわにもあります。
日本三大うちわは京都の「京うちわ」、香川の「丸亀うちわ」、そして千葉の「房州うちわ」です。

関東で作られるうちわとはどんなうちわなのでしょうか。
実は東京育ちの私も知らなかった房州うちわ。

見たことはもちろんあるのですが、実は千葉県の伝統工芸品とは知りませんでした。
この機会に房州うちわについて知りたくなりました。

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房州うちわとは

房州うちわとは千葉県館山市や南房総市周辺で作られているうちわです。
現在作られている工房は少ないですが、京うちわなど他産地のうちわの風合いとはまた異なるうちわで、あおぐだけでなく、インテリアとしても人気があります。

女竹という細い竹の形状をそのまま活かしたうちわの柄は持ちやすく、空気を逃すことなくしっかり捕まえるその強さとしなやかさ。実用的なうちわともいえます。

房州うちわは、2003年経済産業大臣指定伝統的工芸品に指定されました。
千葉県で初めての国指定の伝統工芸品がこの房州うちわだそうです。

歴史

元々は江戸時代、「江戸うちわ」と呼ばれる歌舞伎役者などの浮世絵が貼られたうちわの骨組みを作っていたのが千葉県の南房総市周辺。ここでは女竹(めだけ)という細くてしなやかな竹が自生していたことから、うちわの骨組みが作られるようになりました。

その後うちわの骨組みの大量生産できるようになりましたが、その時点ではあくまで骨組みの生産に特化した取り組みでした。

「房州うちわ」としてうちわの完成までの一貫生産をするようになったのは、ずっと後になってからで大正に入ってから。
日本橋のうちわ問屋が房州の土地で一貫性でうちわを作れないかと挑戦していたころ、関東大震災が発生。焼野原となった東京から移り住んできたうちわ職人は、千葉の土地でうちわ作成を再開し、それが発展したのが、現在の房州うちわです。

製造工程

細かい工程を含めるとうちわ1本に驚くほどの工程があります。
その数21工程ほど。分業制です。
「うちわ屋」は問屋。そのほかその専門の職人がいます。

特に房州うちわは他のうちわとは異なる工程も。

工程を見れば、細部まで丁寧に作られているのがわかり、房州うちわが使い勝手の良い理由も納得です。

1. 竹の切り出し(うちわ屋)

房州産女竹を比較的寒い時期に伐採します。
この時期、竹が締まっているうえ、虫がついていないためです。

伐採する竹は3年を超えるまっすぐなものが最良とされています。

2. 竹皮むき(うちわ屋)

均一の長さに切られた竹の皮をむいていきます。
節にある芽やゴミなども取り除きます。

3. 磨き(うちわ屋)

皮をむいた竹を機械で磨きます。
水洗いしたあと、200~300本ほどの竹をもみ殻と一緒に機械で洗い、最後水でもみ殻を洗い流します。

その後束ねて乾燥させます。

4. 水付け(割き屋)

乾燥させたあと、切れ目を入れ一昼夜水に浸けます。

5. 割竹(さきたけ)(割き屋)

竹の節のやや上の位置に糸を強く巻きつけて固定。糸の位置まで竹を細かく割いて、うちわの骨を作ります。
専門の職人の手により、均等に裂いていきます。

分割する数は成形するうちわの大きさや形によって異なりますが、大体48本~64本といいます。

6. もみ(うちわ屋)

骨を石などに転がすようにこすり、角を取っていきます。

7. 穴あけ(うちわ屋)

竹の節に合わせ垂直に電動ドリルで穴をあけていきます。
これはうちわを支える「弓」を通すための穴です。

8. 編竹(編み屋)

うちわの骨を糸で編んでいく作業。これも専門の職人の手で行われます。
糸を編むのは竹の裂け目より10cm程度上のあたり。

この作業により割いた竹が一直線になります。

9. 柄詰め(うちわ屋)

持ち手の長さに合わせて柄を切り、柄の空洞部分には柄の長さより少し長い柳の枝などを詰め、最後切り落とします。

10. 弓削(すげ)(弓削屋)
弓削(すげ)

弓と呼ばれる部材を作り取り付けます。
真竹を削って弓用の太いヒゴを作り、節に開けた穴に通します。

これが弓と呼ばれる部位になります。
画像のマーカーで印付けした箇所が弓です。

11. 下窓(下窓屋)

扇型に骨を広げていきます。
骨と骨の間が均等になるよう、竹を揉みほぐしながら広げていきます。

竹を編んだ糸の端は穴に通してあるヒゴ(弓)に仮結びします。

12. 窓作り(下窓屋)

弓を曲げていき、糸のたるみをなくすために結び直します。
型を当てながら糸によってできる曲線を整えていきます。
この糸が房州うちわのちょっとしたアクセントになるので、きれいな曲線にするのが大切です。

糸を固定後、編んだ骨の形を整え、窓と言われる扇面と柄の間の骨が見えている部分を作ります。

13. 目拾い(うちわ屋)
目拾い

糸の少し上の位置に細い竹ヒゴを通し、うちわが開いた状態にし、編んだ骨を交互に仕分けしていきます。

14. 穂刈り(うちわ屋)

裁断します。
使うのは押切りといういう器具。

ここではまだ大まかな裁断で、形を整えるは後の工程になります。

15. 焼き(うちわ屋)

骨のゆがみを直すため、火にあぶります。
骨組みの形が安定したら、目拾いの工程で通した竹ひごをはずします。

うちわ骨が完成します。

16. 貼り(貼り屋)

いよいよ紙を貼り付けて行きます。
骨に糊をのせ、あらかじめうちわの形にカットした紙の裏に貼り付けます。
さらに裏側には裏紙を貼りつけます。

その後乾燥します。

17. 断裁(うちわ屋)

乾燥後、断裁機を使って既定の大きさに一枚一枚裁断します。

18. へり付け(縁屋)

細長く切った帯状の和紙などをうちわのヘリの裁断部に挟みこむようにしてつけます。

19. 下塗り(うちわ屋)

胡粉とニカワを水で溶きあわせたもので柄に詰めてある柳の隙間を埋めます。
さらに柄尻をヘラなどで盛り上げるように塗っていきます。

20. 上塗り(うちわ屋)

下塗りが乾いたら、その上に漆や顔料などで柄尻を塗り、整えます。

21. 仕上げ(うちわ屋)

一本ずつプレス機に通し、骨が紙の表面に浮き出るくらい圧力をかけます。
これが最終工程となります。

1本のうちわにどれだけの職人さんが関わっているのでしょうか。
伝統工芸品に相応しい、丁寧に作られた日本のうちわですね。

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房州うちわの特徴

半円で格子模様の美しい「窓」と軽さ。
軽くあおぎやすいだけでなく、ふわっとあおぐだけでしっかりと風を送る房州うちわは実用的で見ているだけでも楽しいうちわです。

絵柄は、昔から日本の伝統的な浮世絵や美人画が中心でしたが、近年は浴衣生地を使ったり、様々な模様を描いたものまでバリエーション豊か。

また、形も「丸型」「卵型」ほか柄の長く扇面が小さめのものまで種類が様々。

自分好みの形とデザインを探すのも楽しいですね。

房州うちわの購入と体験

主な販売店はこちらです。

【うちわの太田屋】
住所:千葉県南房総市富浦町多田良1193
電話:0470-33-2792
公式サイト:http://ota-ya.net/

※訪問前に電話連絡いれてください。

【道の駅とみうら 枇杷倶楽部】
住所:千葉県南房総市富浦町青木123-1
電話:0470-33-4611
営業:営業時間:平日 10:00~17:00 土日祝 9:15~17:00
アクセス:JR富浦駅から徒歩約15分

ネットでのご購入はこちら。

見ているとあれもこれも欲しくなってきます。

【房州うちわ房州堂】
 https://www.bosyudo.jp

【房州うちわ「輝」】
 https://kagayaki.handcrafted.jp

こちらでは房州うちわの制作体験もできます。
体験できるのは「貼り」、「断裁」、「ヘリ付け」の工程。

【夏休み「匠に学ぶ房州うちわ作り」】
場所:“渚の駅” たてやま レクチャールーム
住所: 千葉県館山市館山 1564-1
日時:2023年7月29日 (土) 、8月5日 (土)、8月19日(土)、8月26日 (土)
①12:30~14:00、②14:30~16:00
参加料:1本3,000円
電話かFAXでの申し込みとなります。

申込み先:また旅倶楽部
電話: 0470-28-5086
FAX: 0470-28-5087

※渚の駅 たてやまでは房州うちわの歴史を学べる展示も見ることができます。

以上、夏休みの宿題も兼ねてぜひ千葉県南房総に足を運んでみてはどうでしょうか。

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