能って難しいですよね。
狂言は少し分かるところもありますが、それでもなかなか気軽に観賞するまでには至りません。
私は伝統芸能大好きですが、やはり難しいと感じてしまいます。
能や狂言の楽しみってどこにあるのだろう。
そんな個人的な見解から色々調べてみると、そもそもの観方が違っていたように思います。
能や狂言をひも解くきっかけになりました。
能・狂言とは
能と狂言は違います。
能は能楽師という方が演じ、狂言は狂言師が演じます。
そして能と狂言を総称して「能楽」と呼びます。
歌舞伎同様、能楽はユネスコに無形文化遺産に登録されています。
大河ドラマや時代劇などが好きな方はよく戦国武将が能を楽しむシーンを観たことはありませんか?
実際、織田信長や豊臣秀吉も能が好きだったと伝えられています。
それだけ歴史は古く、奈良時代に中国から伝来した「散楽(さんがく)」が発展し、平安時代には「猿楽(さるがく)」と呼ばれる芸能になったとされています。
現在の歌舞伎が江戸時代にその形を確立させ、歴史は400年ほどに対し、能の歴史は650年ほど前と言えます。
では能と狂言はどう違うのでしょうか。
能・狂言の違いと特徴
能は俗にいう能面、面(おもて)をつけます。
演目によってつけない場合もありますが、シテと呼ばれる主役は面をつけて演じます。
一方狂言は面はつけません。
「狂言=たわごと」と万葉集では読まれていたくらい、今でいうコントのようなものです。(コントというのはあまりに軽く聞こえてしまいますが)
その名の通り、能が歴史的な演目に対し、狂言は日常の場面を滑稽に描く演目となっています。
台詞も多く、場面場面で笑いなども起こります。
一般的に能の演目は1時間~1時間20分。
狂言は20~30分となっているようです。
知っておきたい能・狂言の決まりごと
歌舞伎では「世話物」「荒事」「舞踊」などと演目のジャンルが分けられていますが、能はどうなっているのでしょうか。
また、能ではなんか、独特の決まりごとがあるようです。
演目
能の演目は大きく「神」「男」「女」「狂」「鬼」という5つのジャンルに分けられます。
神は神が主役となり国土・国民の幸せや五穀豊穣を願うもの。
男は戦がテーマ。修羅道に落ちた武将の話。亡霊や死者が現れる。
女は恋愛やその苦悩。
狂は思いつめられた狂気が描かれたもの。
鬼は鬼のほか要請や天狗など架空のものが登場するもの。
と、これらを五番立てといいます。
昔は野外で演じられた能は一日の時間帯でこれらを順番に上演。一日で5演目演じられたといいます。
朝一番は「脇能」、二番目は「修羅物」、三番目「かづら物」、四番目「雑能」、最後は「切能物」の順に上演するのが正式だったといいます。
役割
歌舞伎はある程度主役が決まっていますが、一人とはかぎりません。
ですが、能はいたってシンプルでシテと呼ばれる主役は必ず一人。
シテの相手役のワキ。シテやワキの助演者のツレ。ワキとツレは登場しない演目もあります。
ざわざわと登場人物が多くないのが歌舞伎と違いますね。
能舞台のメインエリアは6メートル四方と狭いため、シテやワキの立ち位置などもある程度決まっているそうです。
型
能は喜怒哀楽などを表情や台詞で表現しません。
それが歌舞伎や普通の演劇と大きく異なるところかもしれませんね。
演者の基本姿勢は少し前かがみ。
背筋をのばし、つま先を少し浮かせながらすり足で歩くのが基本です。
怒りは扇を振り上げ、座りながら扇を振り下ろします。
泣く型を「シオル」というそうですが、手を覆う動作なので分かりやすいと思います。
ユウケンという喜びを表す型は扇を広げ上へ跳ねあげます。
難しいのは「クモル」という沈む気持ちを表す型。面を少し伏せるだけとか。
わずかに面をあおぐと反対に「テラス」という明るい表情を示すといいます。
ちょっとすぐに理解は難しいかもしれませんが、ある程度の型を知っておけばもっと能の見え方が違ってきそうですね。
能・狂言の楽しみ方
狂言はなんとなく、動きも滑稽なところもあり、台詞も能の「~候」でなく「~ござる」といった口語に近い言いまわしもあるためそれなりに楽しめそうです。
ことばのリズムや動きの面白さを感じるまま楽しめるかと思います。
ですが能はなんといってもあの独特なお囃子や型の動きなど、分かりにくいことも多いですよね。
実は「能を楽しむコツは全部を理解しようとしないこと。」と能楽師の方もおっしゃっているほど。
実際、能楽師さんに「現実でない幻想的なことを描いていることも多いので、うつらうつらしながら観ることも究極の味わい方。」というお話を聞いたことがあります。
反対に観客を眠らせることは自分の演技がリラックス効果を与えたととらえる能楽師さんもいらっしゃるとか。
事実、歌舞伎や文楽を観ている途中で寝てしまったことのある方50~60%に対し、なんと能は90%以上だそうです。
不眠に悩む方に、能を薦めたくなるデータですね。
つまりは何か一つでも自分なりのオモシロポイントを見つけるのが一番ということです。
なんとなく眠気に包まれて楽しむもいいですし、装束や面は何百年前に作られたものもあるので、それをポイントとするのもある意味美術鑑賞に近いものがあります。
能舞台も実は色々決まりごとなどがあるのですが、最近私がへぇ~と思ったのは、床下。
演者がドンと足を鳴らしたりしますが、昔はその音を響かせるために舞台の床下にツボをたくさん転がしていたそうです。
(今は屋内で上演されることも多いので、そこまでしなくても音が響くようになっています)
能の歴史とともに、決まった型でそのような物語が表現されるのか、自分なりの視点でみればいいとのお話を聞きました。
それでも物語の内容は把握したいと言う場合は、事前に演目のあらすじをネットなどでチェックするのも手ですね。
国立能楽堂では座席前に詞章という台本が字幕で表示されるシステムもあります。
英語表示では意訳と解説が表示されます。
あくまでストーリー重視という方はこういうものを積極的に活用してみてください。
能・狂言はどこで観れる?
能は薪能といったかたちで各地域でイベントとして開催されますが、定期的に観れるのは能楽堂という能楽の劇場。
東京都だけでも10か所くらいあるんです。
演目なども公式サイトからチェックできます。
【国立能楽堂】
住所:渋谷区千駄ヶ谷4-18-1
電話: 03-3423-1331(代表)
公式サイト:https://www.ntj.jac.go.jp/nou.html
【代々木能舞台】
住所:渋谷区代々木 4-36-14
電話: 03-3370-2757
公式サイト:http://www.yoyoginoubutai.com/
【銕仙会能楽研修所】
住所:港区南青山4-21-29
電話:03-3401-2285
公式サイト:http://www.tessen.org/
【セルリアンタワー能楽堂】
住所:渋谷区桜丘町26-1 地下2階
電話:03-3477-6412
公式サイト:https://www.ceruleantower-noh.com/
【喜多能楽堂】
住所:品川区上大崎4-6-9
電話:03-3491-8813
公式サイト:http://kita-noh.com/
【観世能楽堂】
住所:中央区銀座6-10-1 GINZA SIX 地下3階
電話:03-6274-6579
公式サイト:https://kanze.net/
【宝生能楽堂】
住所:文京区本郷1-5-9
電話:03-3811-4843
公式サイト:http://www.hosho.or.jp/
【矢来能楽堂】
住所:新宿区矢来町60
電話:03-3268-7311
公式サイト:https://yarai-nohgakudo.com/
【梅若能楽学院会館】
住所:中野区東中野2-6-14
電話:03-3363-7748
公式サイト:https://umewakanoh.exblog.jp/
【杉並能楽堂】
住所:杉並区和田1-55-9
電話:03-3381-2279
公式サイト:http://suginaminohgakudou.org/index.html
国立能楽堂のサイトから各地の能楽堂サイトへアクセスできます。
近くの能楽堂でどんな公演があるか、ぜひお近くの能楽堂での公演情報チェックしてみてください。
もっと気軽にという方はこちらも参照にしてください。
食事も楽しめて、演目の開設もしてくれます。
> 日本橋水戯庵で能と食事を堪能!最高のおもてなしスポット
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